研究課題
腸管洗浄液から大腸菌を単離培養、細菌DNAの抽出を行い、PCR法によってコリバクチン遺伝子(clbB)の陽性大腸菌株を分離した。コリバクチン産生に関わるpks genotoxic island遺伝子群の別の遺伝子(clbA, clbQ遺伝子)についても陽性であることを確認した。clbBプライマーを用いたPCR法による細菌検出感度は1pg DNA/sample、1x104 CFU bacteria/mlであった。研究参加患者の腸管洗浄液から糞便内細菌DNAを抽出した。大腸癌の症例は35例、また大腸に異常所見を認めないコントロールが26例であった。細菌DNA量は疾患グループによって違いはなかった。PCR法で細菌数、大腸菌数、コリバクチン陽性細数、頻度を検討した。コリバクチン陽性菌頻度は大腸癌症例では43%、コントロールでは46%であり頻度に差を認めなかった。大腸腺腫症例でも同様であった。 コリバクチン陽性細数の相対菌量について検討した。いずれの疾患群でも大多数が腸内細菌の1%未満であり、大腸癌とコントロール症例で相対菌量に有意差を認めなかった。大腸癌患者の腫瘍所見をもとにコリバクチン陽性例と陰性例を検討した。k-ras遺伝子の野生型腫瘍では全例コリバクチン陰性であった。一方k-ras遺伝子変異型大腸癌では50%でコリバクチンが陽性であった。一方カプセル内視鏡による病変の描出されやすさに有意な影響はなかった。単離した大腸菌を用いて大腸癌由来細胞株HT29細胞からのIL-8誘導能を検討した。コリバクチン陽性の3株(UT060, UT063, UT081)はいずれも70-90pg/mlの分泌を誘導した。コリバクチン陰性の3株も10pg/ml-145pg/mlまでの分泌を起こした。IL-8の誘導にはコリバクチン遺伝子以外の役割が考えられた。
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Digestive Endoscopy
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10.1016/j.ajpath.2014.10.006.