研究課題
昨年度までの研究において、マウスに高増殖性大腸がん細胞株を門脈内に投与すると肝臓に転移性腫瘍を形成したが、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損マウスでは腫瘍の増殖が促進され、そのメカニズムとして免疫細胞と線維芽細胞を介して腫瘍増殖にかかわることを見出した。また、この効果は大腸がん細胞株のみでなく、メラノーマ細胞でも観察された。原発性肝細胞癌についても免疫細胞と線維芽細胞が報告されている。原発性肝細胞癌を含め種々の悪性腫瘍でβカテニンシグナルが重要であることが報告されている。四塩化炭素誘導性肝線維化はCBP/βカテニン阻害剤より抑制することを見出し、そのメカニズムを検討した。CBP/βカテニン阻害剤は肝臓より単離した線維芽細胞の活性化を抑制し、肝臓内白血球におけるマトリックスメタロプロテアーゼの上昇させた。このことから、CBP/βカテニン阻害剤による抗線維化効果には、線維芽細胞の活性化抑制とマクロファージによる線維溶解の亢進が重要であることが示唆された。近年、脂肪肝を背景とした肝硬変が問題となっているが、マウスモデルによる検討では脂肪肝炎による線維化においてもβカテニンシグナルが重要であることを示唆する結果が得られた。肝細胞癌に対しては、CBP/βカテニン阻害剤が腫瘍内の免疫細胞に作用することを示唆する結果が得られており、今後、βカテニンシグナルとスフィンゴ脂質シグナルを調節することによる新しい治療法の開発につながる結果が得られた。
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Sci Rep.
巻: 7 ページ: 325
10.1038/s41598-017-00282-w.