研究課題
CCR7欠損マウス(CCR7-/-、C57BL/6、8~10週齢、雄)と、対応する野生型マウスを用いて、10mg/kgのインドメタシンを皮下注射することにより小腸粘膜傷害を誘導した。潰瘍面積は小腸組織を実体顕微鏡で観察し計測した。腸間膜リンパ節および小腸粘膜固有層から単核細胞を分離し、flow cytometryを用い、CD11c+樹状細胞、抑制性Il-10産生Tr1を誘導するCD11c+CD103+ 細胞分画やCD4+Foxp3+ 制御性T細胞(Treg)などの分画について検討を行った。サイトカインのmRNA発現はqRT-PCRを用いて評価した。その結果、野生型マウス、CCR7-/- マウスともに小腸潰瘍の自然発症を認めなかったが、インドメタシン投与時は両者に多発小腸潰瘍を認め、CCR7-/- マウスではより潰瘍面積が増大した。腸間膜リンパ節のCD11c+CD103+ 細胞は野生型マウスに比べてCCR7-/- マウスで有意な低下を認めた。CD4+Foxp3+ 細胞(Treg)は野生型マウスとCCR7-/- マウスで細胞数に差を認めず、抑制性サイトカインであるIL-10発現にも差を認めなかった。したがって、CCR7を介したCD11c+CD103+ 細胞の遊走がNSAID起因性腸炎の抑制に寄与することが示唆されたが、IL-10発現亢進を介したものではないと考えられた。マウスパイエル板内の共生細菌についてメタゲノム解析を行ったが、共生細菌が少数であり、Alcaligenes以外の菌種の関与を示すことは困難であった。
2: おおむね順調に進展している
マウスパイエル板内の新規共生細菌を示すに至っていないが、CCR7欠損マウスでの小腸粘膜傷害の増悪やそれに伴うCD11c+CD103+細胞の減少を示すことができ、パイエル板を含む免疫担当細胞の遊走が、腸管粘膜抑制性細胞を介し腸管炎症の抑制に関与していることを示すことができている。
マウスパイエル板内の新規共生細菌を示すに至っていないため、ヒトでの解析には進んでいない。マイクロダイセクション法やパイエル板の切片を用いたFISH解析では組織量が限られ、細菌の検出が困難であるため、用いる検体量を増やすなどして検出感度を上げることを試みる。CCR7欠損マウスの検討では予想通りCCR7欠損マウスでの小腸粘膜傷害の増悪やCD11c+CD103+細胞の減少を認めているが、抑制性サイトカインの減少や炎症性サイトカインの増加は見られず、むしろIFN-gなどの炎症性サイトカインの減少を認めている、サイトカインのデータと腸管炎症の状態にかい離があるため、別の腸管粘膜炎症の機序として腸内細菌や食事抗原との関係を中心にさらに解析を進める予定である。さらに、プロスタグランジン、細胞間接着、一酸化窒素など従来NSAID消化管粘膜傷害に関与することが示されている因子について解析を進めていく予定である。
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