研究課題/領域番号 |
26460972
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
入江 厚 熊本大学, その他の研究科, 講師 (30250343)
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研究分担者 |
今村 隆寿 熊本大学, その他の研究科, 准教授 (20176499)
竹田 直樹 熊本大学, 学内共同利用施設等, 助教 (90304998)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / HLA-DR / CRISPR/Cas9システム / トランスジェニックマウス / 疾患モデル動物 |
研究実績の概要 |
本研究は申請者らが作製したHLA-DR4トランスジェニックマウスのホモ接合体が、重篤な潰瘍性大腸炎の症状を呈し、生後3~4か月以内に死亡する原因を突き止めることを目的とする。これまでにHLA-DR4トランスジーンは第3染色体のテロメア側に、約39kb塩基長の欠落を伴い挿入されていることを明らかにしている。 本マウスに見られる大腸炎発症がトランスジーンのホモ接合体のみに認められることから、この病因は、第3染色体の39kb塩基領域の欠損か、あるいはHLA-DR4分子の過剰発現か、あるいはその両方であることが考えられた。39kb塩基領域の欠損が病因である可能性を検討するため、CRISPR/Cas9システムを用いて人為的に同領域をノックアウトしたマウスを作製し、本トランスジェニックマウスと同様の症状を呈するか否かを確認する。いっぽう、HLA-DR4分子の過剰発現が病因である可能性は、導入したトランスジーンによるHLA-DR4分子の発現に不可欠なMHCクラスIIトランスアクチベーター(CIITA)を欠損するマウスと本トランスジェニックマウスを交配することにより、CIITA欠損背景のHLA-DR4トランスジーンホモ接合体マウスを作製し、二倍体量のトランスジーンと39kb塩基領域の欠損は保持するがHLA-DR4分子を発現しないマウスを作製し、HLA-DR4ホモ接合体マウスと同様の症状を呈するか否かで確認する。 本年度は上記第3染色体約39kbを欠損するマウス、およびCIITA欠損マウスと本トランスジェニックマウスとの交配によりCIITA欠損背景のHLA-DR4ホモ接合体マウスを作製した。これらのマウスの解析から、本トランスジェニックマウスのホモ接合体に発症する大腸炎の原因は、第3染色体約39kb領域の欠損ではなく、遺伝子量効果によるHLA-DR4分子の過剰発現であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本トランスジェニックマウスのホモ接合体に発症する大腸炎の原因が、HLA-DR4トランスジーンの挿入に伴う第3染色体約39kb塩基長領域の欠落によるものであるか、あるいは、遺伝子量効果によるHLA-DR4の過剰発現が原因であるかを検討するために、まず前者について、第3染色体に当該欠損と同等の欠損を有するマウスを、CRISPR/Cas9システムを用いて作製した。この遺伝子改変マウスと本トランスジェニックマウスを交配し、両アリルについて第3染色体約39kb塩基長領域を欠損し、かつHLA-DR4トランスジーンをヘテロで持ちこれを発現するマウスを樹立した。これらのマウスは生後2~3か月を経過しても大腸炎を発症せず、正常であった。
一方、HLA-DRを含むMHCクラスII分子の発現に必須のCIITAを欠損するマウスと本トランスジェニックマウスを交配し、CIITA欠損アリルをホモで持ち、かつHLA-DR4トランスジーンをホモで持つマウスを樹立した。これらのマウスでは、末梢血および大腸組織におけるHLA-DR4の発現は認められなかった。これらのマウスについても生後2~3か月を経過しても大腸炎は発症せず、正常であった。
以上より、当初の計画通りの遺伝子改変マウスを樹立し、これにより本トランスジェニックマウスのホモ接合体に発症する大腸炎の原因が、第3染色体約39kb塩基長領域の欠落によるものではなく、遺伝子量効果によるHLA-DR4分子の過剰発現である可能性に絞られ、研究計画は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、これまでの実験データに基づき、本トランスジェニックマウスのホモ接合体に発症する大腸炎は遺伝子量効果によるHLA-DR4分子の過剰発現が原因であるとの仮設を立て、これを検証する。具体的にはHLA-DR4分子の過剰発現が大腸組織に認められるのか、生化学的および病理組織学的解析を行い、形態や種々の分子の発現量の変化等を、本トランスジェニックマウスのヘテロ接合体、ホモ接合体、および野生型の間で比較巣検討する。可能であれば、NGSによる腸内細菌叢の変化も調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究は、順調に進展したため、実験動物等の飼育数および期間が計画よりも少なく行えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究計画に基づき、必要な消耗品等の購入に充当する予定である。
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