研究課題
本研究は申請者らが作製したHLA-DR4トランスジェニックマウスのホモ接合体が、重篤な潰瘍性大腸炎の症状を呈し、生後3~4ヶ月以内に死亡する原因を突き止めることを目的とする。これまでにHLA-DR4トランスジーンは第3染色体のテロメア側に、約39kb塩基長の欠落を伴い挿入されていることを明らかにしている。昨年度までにCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集法により、同領域をノックアウトしたマウスを作製したが、本トランスジェニックマウスと同様の症状を呈さず、本マウスの大腸炎の発症はHLA-DR4分子の過剰発現が原因と考えられた。MHCクラスIIトランスアクチベーター(CIITA)を欠損するマウスとの交配により、CIITA欠損背景のHLA-DR4トランスジーンホモ接合体マウスを作製し、二倍体量のトランスジーンと39kb領域の欠損は保持するがHLA-DR4分子を発現しないマウスを作製した。このマウスは大腸炎を発症せず、HLA-DR4の発現が大腸炎発症に必要であることが示唆された。これと符合して、大腸炎発症マウスの大腸上皮細胞にはHLA-DR4分子の過剰な発現が認められた。HLA-DR4分子の過剰発現に伴い、当該大腸上皮組織では盃細胞の異形と細胞数の減少、粘液量の減少、および小胞体ストレスマーカー分子BiPの発現が観察された。さらに、蛍光(FITC)標識デキストランを経口投与すると、健常マウスと比較して大腸炎マウスでは有意に血中蛍光量の増加が認められた。胎仔期よりタウロウルソデオキシコール酸を投与し続けたマウスでは、この血中蛍光量の増加は抑制された。以上より本マウスのホモ接合体が呈する大腸炎は、何らかの原因によるHLA-DR4分子の大腸上皮細胞における過剰発現が同細胞に小胞体ストレスを誘導し、粘液の減少、バリア機能の低下による腸内細菌等の侵入が原因と考えられた。
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