研究課題
本研究は,炎症性腸疾患をはじめとする難治性腸管障害に対する骨髄幹細胞治療の新規開発が一般目標である.そのために,①骨髄-腸管連関の全容を解明すること,②前臨床試験として骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell; MSC)移植治療の最適化を目指すこと,③腸炎をきたした生体における内因性骨髄細胞の異常性を解明すること,の3点を研究期間内における本研究の行動目標とした.すなわち,骨髄-腸管連関を解明し,それを応用することで,epithelial restitution,上皮の増殖・分化からなる傷害腸管の創傷治癒機転そのものを促進させ,同時に難治性腸炎における骨髄ニッチ細胞(niche cell; NC)の異常を是正する新規再生治療の開発を目指した.平成26年度は,当初の予定を変更し,主に上記③の腸炎をきたした生体における内因性骨髄細胞の異常性の解明を目指した.すなわち,腸炎においては,HSCおよびこれを支持するNCが異常化し,腸管組織への過剰な炎症細胞浸潤を誘発する.これに対して,MSC治療は,骨髄ニッチを正常化することで,腸炎の重症化を抑制する」という仮説を検証した.腸炎を惹起したモデルにおける造血幹細胞や骨髄ニッチの異常を明らかにし,これらの異常が外因性に投与したMSCにより是正されることを明らかにした.平成27-28度は,骨髄移植のプロトコール確立のため,前処置(放射線照射およびブスルファン)の条件決める基礎的研究を施行した.骨髄移植前処置の条件設定のうちブスルファン(BU+全身放射線照射(TBI)では,TBI 10Gyが至適と考えられた.しかし,骨髄移植後のratsへの腸炎惹起に関しては,死亡率が高率であること,移植片由来のMSCの腸管生着が非常に低率なため,解析に耐えないことより断念せざるを得なかった.
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Medical Science Digest
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