本研究では,傷害腸管組織に検出される骨髄由来細胞や骨髄間葉系幹細胞にまつわるさまざまな矛盾や問題点を整理することで,骨髄-腸管連関の謎を解明し,難治性腸管障害への適正な治療応用を目指した.腸炎では,造血幹細胞およびこれを支持するニッチ細胞が異常化し,腸管への過剰な炎症細胞浸潤を誘発する.骨髄間葉系幹細胞治療は,骨髄ニッチを正常化し,腸炎の重症化を抑制した.骨髄移植後のラットへ腸炎を惹起すると,死亡率が高率であること,移植片由来骨髄間葉系幹細胞の腸管生着が非常に低率なため,解析に耐えなかった.この点は今後の重要な研究課題である.
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