研究課題
難治性炎症性疾患である潰瘍性大腸炎 (ulcerative colitis; UC)は特定疾患に指定されており、多くの症例は5-アミノサリチル酸製薬やステロイド治療によっては軽快するが、これらの治療に抵抗する重症例が約10%存在する。薬物療法などの内科的治療法の進歩により、重症例や難治例に対しても寛解状態が得られるようになってきている。一方で、UCの最終的な治療目標は長期に臨床的な寛解を維持することであるが、様々な治療法や臨床的因子のなかでどのような要因が長期寛解に寄与するのかは明らかとされていない。近年粘膜治癒として注目されている内視鏡的な活動性についても、どの程度の内視鏡的所見の改善が予後と関連するかも明らかでない。前年度に引き続き本年度の研究では、臨床的寛解期に内視鏡検査を施行されたUC患者を対象とし、臨床的寛解状態にある患者の内視鏡的な活動性が長期予後に影響を及ぼすか否か、さらに長期予後に関連する因子の検討を行い、UCに対して大腸内視鏡検査を施行された823件724症例のうち、臨床的寛解期かつ内視鏡検査後2年以上経過が追跡可能であった331例を対象とした。年齢、性別、病型、直近の重症度、寛解導入治療、寛解維持期間、内視鏡的活動性、組織学的活動性と臨床的再燃の有無について検討を行ったところ、観察期間中に臨床的再燃が69例(20.8%)に認められた。単変量解析では内視鏡活動性スコアと再燃率に有意な相関を認めたが、そのほか重症度、寛解維持期間、血中ヘモグロビン値、寛解導入治療法とも相関を認めた。今後、再燃率に関与する独立した因子を抽出するために多変量解析を行う。
3: やや遅れている
臨床的寛解、かつ内視鏡的寛解が達成されている症例の選択、その後の経過の追跡を行い、臨床所見、内視鏡所見、寛解導入および寛解維持治療法、内視鏡所見、病理組織所見を数値化して解析中で、単変量解析まで終了している。データ量が膨大であること、欠測値の補正のなどため、本年度の進捗はやや遅れている。
本年度に解析している後ろ向きの症例データをさらに続行し、生存解析、多変量解析により再燃率に関与する独立した因子を抽出することに並行して、臨床的緩解期にある潰瘍性大腸炎患者を対象として前向き研究のエントリーを進める。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である
研究計画通りに進めていく予定である
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Clin Nutr
巻: 34 ページ: 1202-9
10.1016/j.clnu.2015.01.003