【特異抗体によるヒト大腸粘膜上皮における発現の検討】 腫瘍壊死因子(TNF-α)の細胞内ドメイン(TNF-α-CTF)抗体ならびに膜型メタロプロテアーゼ(ADAM)17抗体を用い、大腸組織内におけるTNF-α-CTFとADAM17の局在について検討した。また、TNF-α-CTFおよびADAM17の発現と潰瘍性大腸炎患者の病勢との関連について検討を行った。潰瘍性大腸炎患者の大腸粘膜組織において、TNF-α-CTFならびにADAM17は大腸上皮細胞に発現していた。一方、ヒト正常大腸組織では、潰瘍性大腸炎患者の組織と比べきわめて微弱な発現であった。潰瘍性大腸炎活動指数の一つであるMayo Scoreと、TNF-α-CTFならびにADAM17の発現との関連を検討したところ、Mayo Scoreが高いほどADAM17の発現が強い傾向があったが、統計学的な有意差は認められなかった。TNF-α-CTFの発現とMayo Scoreとの関連性は認められなかった。さらに、同様に採取された大腸粘膜組織を用い、ADAM17のmRNAとタンパク発現を比較したところ、潰瘍性大腸炎患者における大腸粘膜組織におけるADAM17のmRNAとタンパク発現に比べ、正常大腸粘膜組織では有意にその発現の低下が認められた。 【TNF-α-CTFの核内移行抑制の検討】 大腸培養細胞(CaCo2、HT29)を用いた検討では、ADAM活性化因子TPA20nMによりADAM17を活性化させた後、TNF-α-CTF抗体を用いてTNF-α-CTFの細胞内局在を蛍光顕微鏡で確認したところ、TNF-α-CTFは核内において発現していた。一方、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の投与後、TPA刺激を行った場合、TNF-α-CTF は、細胞膜あるいは細胞質に発現しており、ARBにてTNF-α-CTFの核内移行が抑制された。
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