研究課題/領域番号 |
26460979
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
櫻井 俊治 近畿大学, 医学部, 講師 (90397539)
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研究分担者 |
工藤 正俊 近畿大学, 医学部, 教授 (10298953)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 大腸癌 / ストレス応答 / プロテアソーム |
研究実績の概要 |
難治性の炎症性腸疾患(IBD)は将来のcolitic cancer 発生リスクが高い。難治性に関する分子機序の解明は発癌リスクの予測に有用であると考えられる。ストレス応答蛋白cold-inducible RNA binding protein(Cirp)、heat shock protein A4 (HSPA4)に注目して、難治性IBD、大腸発癌の予測の可能性を検討した。 2011年4月より2013年8月の間に当院を受診したIBD患者の大腸粘膜組織を内視鏡時の生検にて採取し(n=236)、ストレス応答蛋白、炎症に関わる遺伝子、幹細胞マーカーなどの発現をqRT-PCRにて測定した。DSS、AOMによる大腸炎、大腸発癌モデルおよび欠損マウスを用いて、ストレス応答蛋白の難治性IBD及びcolitic cancerへの関与を検証した。 IBD患者の大腸粘膜においてストレス応答蛋白と幹細胞マーカーの発現量の間に有意な相関を認めた。治療抵抗性IBD患者においては、Cirp, HSPA4, stemness factor Sox2の発現量が有意に亢進した。ステロイド抵抗例では、有効例に比べて大腸粘膜でのBmi1, HSPA4の発現が高値であった。ストレス応答蛋白や幹細胞マーカーの発現量が難治性判定のバイオマーカーになる可能性が示された。ストレス応答蛋白は炎症細胞におけるBcl-2の発現を亢進させて免疫細胞のアポトーシスを抑制し、TNF-a, IL-23の産生を亢進させ治療抵抗性獲得を引き起こす。治療抵抗性は更なる慢性炎症を惹起し、幹細胞の増幅を介して大腸発癌を促進する。 慢性炎症に対するストレス応答が免疫応答を増幅させ、難治性IBDの病態を惹起しcolitic cancerのリスクを高める。大腸粘膜生検によるストレス応答蛋白の発現の測定がサーベイランス内視鏡の指標になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はストレス応答と大腸の炎症および発癌について研究をまとめた。プロテアソーム制御因子であるガンキリンの炎症性発癌における機能解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ガンキリンの組織特異的欠損マウスと大腸炎症性発癌モデルを用いて、大腸の炎症と発癌におけるガンキリンの役割を検討しており、すでにいくつかのデータを得ている。更なる解析・考察を加えて論文を作成し、今後の研究の進展につなげたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、昨年度に回収したサンプルの測定や、同じく昨年度に作成した発癌モデルの解析を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、組織化学的、培養生物学および分子生物学的解析を行い、大腸の炎症と発癌におけるガンキリンの役割を明らかにしていく。
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