消化管症状を訴える患者を対象とした血清学的なスクリーニングと内視鏡・組織検査を組み合わせた検討においては、グルテン関連疾患に特異的な血清抗体検査陽性だが、組織学的変化はなく、またセリアック病のハイリスクである遺伝的素因が陰性で、非セリアックグルテン過敏性腸症が疑われる患者が存在する可能性が考えられた。グルテンによって症状が引き起こされている可能性が強く疑われる例も少なくない。しかし、現時点ではまだ確立された診断基準がなく、確定診断には至っていない。 一方、グルテン関連腸症の病態解明においては、グルテン分解産物と腸管免疫の相互作用の門戸として、腸粘膜に炎症時に発現するペプチドトランスポーターに着目した。動物モデルをもちいて大腸炎症時に発現が亢進し、免疫応答を惹起することを解析した。 腸管腔内から粘膜内への輸送経路は、細胞間輸送路は分子量に上限があるが、細胞内の輸送路にはない。基質選択性の低いPEPT1は、細胞内輸送経路として注目されてきた。今回我々は、腸管ループを用いた独自の手法で、炎症時にPEPT1が炎症性サイトカインの産生や免疫担当細胞の大腸炎症粘膜へのリクルートメントに関与していることを明らかにした。またその局在についても共焦点レーザー顕微鏡を用いて明らかにした。 今後は、炎症時の大腸粘膜におけるPEPT1発現メカニズムなどを解明する予定である。また、それらの結果を、グルテン過敏性腸症の病態を反映したバイオマーカーの探索につなげたい。
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