研究課題
以前に、肝癌発症のしやすさを規定する遺伝因子を同定するためのゲノムワイドアソシエーションスタディ(GWAS)解析で、1394例のC型肝炎罹患者と5486例の非感染者のサンプルを用いてC型肝炎感染から肝臓癌を発生しやすい宿主因子としてMICA遺伝子の上流に位置するSNPを 同定した(Nat Genet. 2011)。この研究では、肝癌発症規定遺伝子MICAのSNPのrisk allele を持つC型肝炎感染者は血清で測定したMICA蛋白の発現量が少ないことを報告している。すなわち、MICAは本来、C型肝炎ウイルス感染細胞あるいは肝癌のfociに高度に発現し、natural killer 細胞やCD8+T細胞のレセプター(NKG2D)を活性化して感染細胞あるいは癌細胞の排除に向かわせる役割を担っていると考えられているリガンドであるものの、risk alleleを持つ人は この発現が低くなることで感染細胞あるいは肝癌fociの排除が不全となり、結果的に肝臓癌を発症しやすくなっていると考えられた。従って、MICA蛋白の発現量を感染肝細胞で制御することは、ウイルス排除ひいては肝癌発症の抑制にもつながると思われた。MICA蛋白発現量の調節は、プロモーター活性に依存するだけでなく、転写後調節も大きく関与していることが知られていたので、今回は、肝癌発症感受性遺伝子MICAを機能的に標的としうるmicroRNAをスクリーニングし、MICA蛋白の発現を制御しているmicroRNAとしてmiR93-106bを同定した。それに対応するantisense分子の導入などにより、MICAタンパクの発現量が直接制御可能であることを示した。
3: やや遅れている
当初の計画では同定したmicroRNAのトランスジェニックマウスの作製まで踏み込む計画だったが、実際にはmicroRNAの同定までにとどまった。MICA蛋白量の調整は同定したmicroRNAで可能であるが、動物モデルを作製する前に、その生物学的意義をもう少し検討する必要がある。
同定したmicroRNAあるいはそのアンチセンス核酸の作用をin vitroで検証し、実際にNK活性を上げるかどうか検討したうえで、肝癌発症予防のためのin vivo解析を目指した遺伝子改変マウスの作製にまで進むことを検討する。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 備考 (1件)
Oncotarget
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J Gastroenterol.
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10.1007/s00535-013-0909-8.
https://sites.google.com/site/225kenncrna/