研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)は一度感染が成立すると薬物療法による駆除はほぼ不可能であることが知られており、HBV 駆除を目指した新規抗ウイルス療法の開発が強く望まれている。近年HBV の複製の鋳型であるcovalently closed circular DNA(cccDNA)が宿主のヒストンタンパクによりクロマチン様構造を呈した状態で核内に安定に存在し、cccDNAからのプレゲノムRNAの転写がヒストンのアセチル化やメチル化などのエピジェネティックな制御を受けているという報告がなされ、注目を浴びている。本研究ではHBV 複製におけるエピジェネティクス制御機構の解析とエピジェネティクス関連薬剤のHBV 複製への影響の検討を行う。まずHBVの複製過程におけるエピジェネティクスの関与を特にアセチル化の観点から検討するために、HBV DNAを導入したヒト肝癌細胞株HepG2.2.15をヒストン脱アセチル化酵素 (histone deacetylase; HDAC)阻害剤であるTrichostatin-A (TSA) で刺激し、pregenomic RNA (pgRNA)の転写を検討したところ、HBV pgRNAの転写の亢進を認めた。さらに、cccDNAのヒストンの修飾状態をchromatin immunoprecipitation (ChIP) assayで解析したところ、cccDNA ヒストンH3/H4のアセチル化が亢進していた。今後はヒストンアセチル化の詳細なメカニズムの解明と他のHDAC阻害剤やHAT(Histone acetyltransferase)阻害薬のHBV複製に対する影響を検討する。
2: おおむね順調に進展している
まずHBVの複製過程においてヒストンアセチル化などのエピジェネティクスが関与していることが明らかとなったため、今後はそのアセチル化を誘導する酵素など、詳細なメカニズムの解明へと歩を進めていく。これまでの結果からHAT(Histone acetyltransferase)阻害薬がHBV複製を抑制する可能性があり、今後検討を重ねていく。本研究に必要な細胞株や試薬などは既に準備できており、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
本研究に必要な細胞株や試薬などは既に準備できている。一部の解析は既に開始しており、今後は迅速にさらなる解析を進める。また今後の解析に用いる臨床検体の採取のため、当院でB型肝炎患者を診察している医師、及び肝癌治療を行なっている医師に再度協力をお願いした。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
J Hepatol.
巻: epub ページ: epub
10.1016/j.jhep.2015.02.031.
Carcinogenesis.
巻: 35 ページ: 2404-14
10.1093/carcin/bgu136. Epub 2014 Jun 19.