研究課題
本研究ではB型肝炎ウイルス(HBV)の複製の鋳型covalently closed circular DNA(cccDNA)からの転写のエピジェネティクス制御機構の解明とグルココルチコイドのHBV 複製への影響の検討を行った。前年度の検討では、HBV DNAを導入したヒト肝癌細胞株HepG2.2.15をグルココルチコイドの一つであるデキサメタゾンで刺激したところ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるTrichostatin-A(TSA)による刺激と同様にHBVの転写上昇とcccDNAヒストンH3/H4のアセチル化が認められ、エピジェネティックな機序の関与が示唆された。その機序を検討したところ、デキサメタゾンはヒストンアセチル基転移酵素(Histone acetyl transferase; HAT)であるGCN5、PCAF、CBPをpgRNAの転写が開始されるコア・プロモーター領域へ誘導することがわかった。さらにHAT阻害剤であるCPTH2(GCN5 阻害剤)、Garcinol(PCAF/p300阻害剤)、C646(p300/CBP阻害剤) の作用を検討したところ、CPTH2はデキサメタゾンにより誘導されたHBV転写を減弱させた。以上よりcccDNAはヒストンのアセチル化というエピジェネティクス制御機構によりHBV pgRNAの転写が誘導され、複製が亢進することが明らかとなった。さらにデキサメタゾンにより誘導されるHBV複製にもHATの分子群、特にGCN5によるエピジェネティックな機序が関与しており、GCN5阻害剤によるHBV増殖抑制の可能性が示された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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