研究実績の概要 |
1.ISG 発現による HCV 感染培養系への影響の解析:Genotype 2a JFH1株由来 HCV 感染培養細胞に ISG 発現プラスミドベクターを遺伝子導入し,培養上清中 の HCV コア抗原を測定した。さらに細胞内 HCV-RNA にはリアルタイム PCR を行い、細胞内蛋白には HCV コ ア蛋白によるwestern blotを行いHCV増殖抑制効果を解析した。解析に用いたISGは、GBP-1, IFI6-16, IFI-27, IRF-1であり、ISGそれぞれをHCV感染培養系へ強制発現したところ、培養上清中のHCVコア抗原・細胞内HCV-RNAが有意に減少していた。細胞内HCVコア蛋白もISG発現により蛋白発現が有意に減少した。以上から実際のHCV感染培養系でもこれらのISGがHCVに直接作用して、HCV増殖を抑制していることが確認された。 2.ISG 発現を抑制する siRNA の作成と HCV 感染培養系への影響:ISG mRNA を標的とする siRNA(shRNA 発現プラスミド)を作成した。解析に用いたISGは、上記のGBP-1, IFI6-16, IFI-27とした。作成した siRNA を ISG 発現プラスミド ベクターとともに Huh7 細胞へ遺伝子導入し,western blotting により,蛋白発現抑制について確認したところ、ISG発現蛋白が抑制されていた。 作成したsiRNAをGenotype 2a JFH1株由来HCV感染培養細胞に導入して,培養上清中のHCVコア抗原を測定した。siRNAを導入したところ、HCVコア抗原量が増加することが確認された。siRNAでISG発現を抑制したところHCV増殖が上昇したことから、これらのISG (GBP-1, IFI6-16, IFI-27)がHCV増殖に対して抑制的に作用していることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1.ISG に対する HCV 非構造蛋白の作用機序の解析:HCV 非構造蛋白と相互作用を示す ISG が同定できたら,ISG 蛋白への作用エピトープを特定するため, ISG の truncate plasmid を作成する。ISG truncate 発現プラスミドベクターと HCV 非構造蛋白とを Huh7 細胞へ cotransfection し,蛋白を回収して,免疫沈降法で相互作用を確認する。免疫沈降法で,相互 作用を示すものを,mammalian two-hybrid system でも確認する。免疫沈降法や mammalian two-hybrid system で相互作用を示した ISG に対して,HCV 非構造蛋白が,ISG 蛋白合成に影響を及ぼしているかを 解析する。Huh7 細胞へ HCV 非構造蛋白発現プラスミドベクターを導入し,細胞外に IFN を一定時間作用 させ,細胞蛋白や RNA を回収する。ISG の蛋白合成や転写活性に影響を与えているかどうかを western blotting や RT-PCR 法で確認する。 2.ISG 蛋白と HCV 非構造蛋白との相互作用の解析(免疫沈降法,Two hybrid 法):HCV 非構造蛋白を発現するプラスミドベクターを作成する。作成する HCV 非構造蛋白:NS3, NS4B, NS5A, NS5B。申請者らが同定したGBP-1, IFI-6-16及びIFI-27を発現するプラスミドベクターとHCV非構造蛋 白発現プラスミドベクターを 293T 細胞へ遺伝子導入し,蛋白質を回収する。回収した蛋白質を用いて, 免疫沈降法にて解析する。さらに免疫沈降法の他に,酵母two-hybrid systemを利用したmammalian two-hybrid systemを用いる。HCV非構造蛋白をDNA結合ドメインと融合させた蛋白発現プラスミドベ クターと,ISG 発現蛋白を転写活性ドメインと融合させた蛋白発現プラスミドベクターを構築する。両 者とルシフェラーゼ発現ベクターを,Huh7 細胞へ導入する。ISG と HCV 非構造蛋白が相互作用を示せば, ルシフェラーゼがレポーターとして発現するので,レポーターアッセイを行い解析する。
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