研究実績の概要 |
P.acnes/LPS投与による劇症肝炎モデルにおける肝マクロファージ(Kupffer細胞)の活性化と貪食能に関する基礎的な検討を継続して行った。H26年度に確立したマウスマクロファージ活性化の系を用いて、肝障害を起こす機序の解明のため、グラム陽性菌(P. acnes)だけでなく、抗炎症効果が報告されているグラム陽性菌(Clostridium butyrium MIYAIRI588:CB)および敗血症に深く係わるグラム陰性桿菌(E.coli)を用いて、肝炎・炎症に関わる遺伝子群を網羅的に解析した。1)マウスマクロファージ細胞株(RAW264.7細胞)に熱処理により死滅させたP.acnes、CB、E.coliを単独あるいはLPSと同時投与し、cDNA array (Antibacterial Response RT2 Profiler PCR Array)を用いて細菌に対する宿主細胞の反応を網羅的に解析した。特に炎症性サイトカイン(TNFa, IL1b, IL6, IL10, IL12b, IL18)ならびにinnate immunity を司るToll-like receptor (TLR)群(TLR2, TLR4, CD14)の発現をRael-time PCRにてより詳細に検討した。マクロファージは、P. acnes やCBに比べE.coli により著しく炎症性サイトカイン(IL1b, IL6, IL18)を発現し、P.acnes やCBによりTLR4の発現抑制が確認された。一方、P. acnes やCB によってもLPSを同時添加することで、各サイトカインは相加的に発現が誘導され、劇症肝炎モデルにおける細菌と肝マクロファージの関連を検討することが出来た。2)肝マクロファージの活性化時における貪食能の変化をRAW264.7細胞を用いて解析した。蛍光標識ビーズ(FITC標識ウサギIgGコートラテックスビーズ)と超音波造影用マイクロバブル(Sonazoid)を添加し、1、6時間後に蛍光強度を測定するとともに,超音波断層装置(Ascendus, 日立メディコ)のハーモニックイメージでSonazoidを取り込んだマクロファージを可視化した。LPSで活性化した場合もハーモニックイメージにおいては有意な差は確認できなかった。
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