研究課題
がん幹細胞は増殖、転移、抗がん剤抵抗性に関わる重要な標的と考えられている。本研究では肝細胞がんの可塑性について、特にがん幹細胞の維持制御機構と微小環境を構成する細胞との関連について検討を行った。肝がん培養細胞株Huh7細胞と線維芽細胞WI-38、星細胞株であるLX2、血管内皮細胞株であるHUVECとの共培養システムを用いて検討を行い、EpCAM陽性肝がん幹細胞分画がWI-38共培養によって増加すること、WI-38で高いTGF-betaの発現が認められ、TGF-betaに対する中和抗体でその効果を抑制可能であることを見出した。さらに、WI-38との共培養によりHuh7細胞に遠隔転移能力が獲得されることを免疫不全マウスを用いたin vivoでの解析で同定した。WI-38から分泌されるTGF-betaがHuh7細胞に与えるエピジェネティック変化につき検討を行ったところ、TGF-beta投与48時間後にはHuh7細胞でH3K36me2が特異的に減少すること、この減少はヒストン脱メチル化酵素KDM2Bの発現亢進を伴っていることを同定した。KDM2BはEpCAM陽性肝癌幹細胞に強発現していることから、微小環境細胞から誘導されるサイトカインがエピジェネティックメモリーを制御することでがん幹細胞の可塑性を制御している可能性が示唆された。さらに、TGF-beta以外の血清サイトカインががん微小環境を反映し抗がん剤感受性に関わるかを検討した結果、6種類の血清サイトカインを用いることでソラフェニブの感受性を予測することができることを見出した。本研究はがん微小環境がエピジェネティックに肝細胞がんの未分化性を制御し抗がん剤感受性を規定する重要な要因であることを見出した点において極めて重要な研究成果を提出したと考える。
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