本研究は、マウスおよびヒト脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画を分類し、各細胞分画における肝細胞への分化能、抗炎症効果、抗線維化効果を検討し、肝修復再生療法に有用な細胞分画を同定することを目的する。まず、マウス脂肪組織由来間質細胞についての検討を行った。C57BL/6Jマウス (10-12 週齢、雄) の鼠径部より脂肪を採取し、Collagenase type I 処理により間質細胞を分離し、非培養脂肪組織由来間質細胞群を得た。獲得した。非培養脂肪組織由来間質細胞群について、急性肝炎マウスモデルに対する治療効果を検討した。急性肝炎マウスには、C57Bl/6マウス(10-12週齢、雌)にConcanavalin A 300 μgを尾静脈投与して作成したマウスモデルを用いた。Concanavalin A投与後3時間後に、非培養マウス脂肪組織由来間質細胞を1x10^5個投与したマウスについて、Concanavalin A投与後24時間において血清を採取、血清AST、ALT、LDH活性を測定した。非培養マウス脂肪組織由来間質細胞を投与したマウスにおいて、細胞を投与しないマウスに比較して、血清AST、ALT、LDH活性は有意に低値を示した。マウス脂肪組織由来間質細胞群に含有される細胞分画について、表面抗原発現解析による分画群の解析を行った。間葉系幹細胞に関連する抗原CD105、CD44、CD90、CD73はそれぞれ15.4%、6.5%、40.3%、16.1%の細胞が発現、また、白血球全般に発現するCD45は14.3%、血管内皮細胞に発現するCD31は21.6%、未成熟血液細胞において発現するCD34は、11.4%の細胞に発現を認めた。次年度以降、表面抗原より分類される各細胞分画の特徴解析に関する基礎データが獲得された。
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