研究課題
本研究は、脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画を分類し、各細胞分画の生物学的特性を解析し、肝疾患における肝修復再生療法に有用な細胞分画を同定することを目的とする。C57Bl/6JあるいはGFPトランスジェニックマウスの鼠径部皮下脂肪組織を採取し、コラゲナーゼ type Iにて酵素処理を行い、間質細胞群を獲得した。C57BL/6Jマウスの腹腔内にDimethylnitrosamineを2回/週、4週間投与したマウスへ、450000個の獲得した非培養脂肪組織由来間質細胞群を、経脾的に投与したマウスにおいて、ラクテック投与コントロールマウスと比較して、投与1日後、11日後の血清ALT、LDH活性値に差を認めず、脂肪組織由来間質細胞群投与の安全性を示した。投与後7日目の肝組織において、炎症細胞集簇部位にGFP陽性細胞の集積を認め、投与脂肪組織由来間質細胞群の炎症部位移行性が確認された。また、マウス脂肪組織由来間質細胞群のCD45陽性細胞とCD45陰性細胞をセルソーターにて分離し、RNAを抽出、DNAマイクロアレイにより遺伝子発現解析を行ったところ、発現遺伝子のheat mapにて両群が異なる発現プロファイルを示すことが示唆された。以上より、脂肪組織由来間質細胞群の肝内炎症部位への遊走性が示された。また、脂肪組織由来間質細胞群の中の白血球表面抗原を発現する細胞分画と発現しない細胞分画についての生物学的特徴の違いが存在する可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
非培養マウス脂肪組織由来間質細胞群が炎症部位に選択的に集簇することが、慢性肝疾患/肝線維化マウスモデルにて示され、肝疾患における炎症部位への影響があると考えれた。また、CD45陽性の汎白血球抗原を発現する細胞群が、CD45陰性の細胞分画とは異なる遺伝子発現プロファイルを示すことが明らかとなったことより、表面抗原発現の違う脂肪組織由来間質細胞群の細胞分画は、異なる特徴を有する可能性が示唆された。脂肪組織由来間質細胞群における、さまざまな分画の特性解析への基礎的知見が得られた。
脂肪組織由来間質細胞群の表面抗原の違いと生物学的特徴の解析を進め、肝修復再生療法に有用な分画の同定、特徴の解明を進める。また、他のマウス肝疾患モデルも用いて、明らかとなった細胞分画のin vivoにおける作用を解析する。
平成26年度より3ヶ年計画の最終年度が平成28年度にあたり、研究を継続するため。
研究計画に従い、脂肪組織由来間質細胞群における肝修復再生療法に有用な細胞分画の同定の研究を進めていく。消耗品、学会発表、謝金等に使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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