研究課題/領域番号 |
26460996
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
梅村 武司 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (30419345)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | AIH / PBC / HLA / M2BP |
研究実績の概要 |
本研究は次世代シークエンサーを用いて、自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変 (PBC) 患者の全エクソン領域のリシークエンシングを行い、真の疾患感受性遺伝子とその多型・変異を特定し、臨床応用へと展開することが目的である。 今年度はAIH患者156例におけるHLA遺伝子6座 (HLA-A、-B、 -C、;-DR、-DQ、-DP)のタイピングを行い、HLA-DRB1*04:05-DQB1*04:01ハプロタイプがAIHの発症と強く関連がある事を報告した。(Umemura et al. PLOS ONE 2014)さらに、このハプロタイプ保有者では血清IgG値、抗平滑筋抗体陽性率が高いことも明らかとした。肝不全発症例、肝癌発症例ではそれぞれHLA-DRB1*08:03-DQB1*06:01ハプロタイプ、DRB1*15:01-DQB1*06:02ハプロタイプが高率になることを発見した。 PBCについてもHLA-DRB1*09:01-DQB1*03:03ハプロタイプが病態進行例、特に肝硬変、肝移植進行例に高率である事を報告している。さらに、STAT4遺伝子のSNPと抗核抗体の陽性率との関連性を明らかにした。(Joshita, Umemura et al. Disease Markers 2014) その他に肝の線維化の非侵襲的なマーカーであるM2BPGiをPBC症例で測定し、M2BPGiがPBCの肝線維化のステージと有意な相関(rho = 0.903, P <0.001)を示すこと、他の非侵襲的マーカーより優れていることを明らかにした。M2BPGiが2.0以上の症例では有意に肝不全発症、肝関連死と関連することを明らかとした。(Umemura et al. Am J Gastro 印刷中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AIHとPBCについてそれぞれ約150例と300例の検体が収集されている。全症例について通常のHLAタイピングは終了し、論文報告を行った。また、ランダムに抽出した検体をAIHとPBCについて30症例ずつ次世代シークエンサーで全HLA遺伝子のPCRを施行することに成功した。現在これらのHLAの塩基配列について報告の配列との相違などについて検討している。新しいアリルの発見もあり、投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中であるHLAのリシークエンシング解析を終了し、AIH, PBCの疾患感受性HLA遺伝子が存在するか決定する。AIH, PBCと疾患感受性HLA遺伝子を明らかにする事が可能となる予定である。 次に、全エクソン領域のゲノム配列の決定を15症例ずつ施行して、疾患に特異的な遺伝子変異が見つかるかどうか検討を行う。発見された変異について残りの検体でDNAタイピングを行い、最終的に疾患感受性を規定する多型・変異として正しいかどうか統計学的な解析を行い確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度施行したHLAタイピングとM2BPGiの測定が安価に行えたこと、海外学会への参加を予定していたが諸事情で渡航できなくなり、旅費が使用されなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のHLA全領域のリシークエンシングはH27年度の予算通りに行うことに加えて、全エクソン領域解析の消耗品購入に次年度使用額をあてることができるため解析可能な症例数をAIHとPBC5例ずつ増やす計画に変更する。 この計画変更により、より正確なデータ解析が行えると考えられる。
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