研究課題/領域番号 |
26460996
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
梅村 武司 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (30419345)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | AIH / PBC / PTPN22 / M2BP |
研究実績の概要 |
本研究では次世代シークエンサーを用いて自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者のHLA領域のリシークエンシング、さらにはエクソーム解析を行い、真の疾患感受性遺伝子とその多型・変異を特定し、臨床応用へと展開することは目的である。 今年度は白人の自己免疫疾患の発症と有意に関連のあるPTPN22遺伝子多型についてAIH 166名、PBC 262名、健常者 322名で解析検討を行った (Umemura et al. Scientific Reports revise中)。自己免疫疾患の発症と関連のある2つの遺伝子多型rs3996649とrs2476601は日本人750名の検討では1例も多型を有していなかった。次に7つの遺伝子多型を選択し、検討をするとAIHでは4つの遺伝子多型がPc = 0.046と有意な関連性を有することが判明した。これらはAIHの疾患抵抗性と関連を認めた。PBCでは有意な差を示す多型は認めなかった。さらに、推定ハプロタイプの検討では同じハプロタイプがAIH (P=0.0067)、PBC (P=0.0048)の疾患抵抗性に関して有意な関連性を示した。 PBCについては肝線維化の非侵襲的マーカーであるM2BPGiを測定し、PBCの肝生検の結果と相関を示すこと、診断時にM2BPGiが2.0以上の場合に将来肝不全を発症する事を明らかにした (Umemura et al. American Journal of Gastroenterology 2015)。同様に血清中の細胞死のマーカーであるサイトケラチン18フラグメント、アポトーシスのマーカーであるM65、M65EDについてELISAで測定し、病態との関連性を明らかにした (Sekiguchi, Umemura et al. PLOS ONE 2015)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AIH 166名とPBC 262名についてはHLAの通常のタイピングは終了しており、現在健常人についてタイピング中である。AIHとPBCについて30例ずつランダムに抽出し、次世代シークエンサーで全HLA遺伝子のPCRを施行し、解析は終了して6桁から8桁のHLAのタイピングは終了している。現在得られた塩基配列について従来から報告のある配列との相違を検討中である。新しいアリルの発見もあり投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
HLA領域のリシークエンシング解析は現在投稿準備中である。 全エクソン領域のゲノム配列の決定を行う検体は家族発症例であるAIH 3組6名、PBC 3組6名について準備している。平成28年度中にこれらの症例について解析を行い、疾患感受性を規定する遺伝子変異が見つかるか検討を行う。発見された変異について残りの検体で発見された多型・変異が病態と関連性があるか統計学的な検討を行い、確認をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度施行したPTPN22遺伝子多型の解析、細胞死マーカーの測定が安価に行えたこと、海外学会への参加予定であったが諸事情で渡航できなくなり、旅費が使用されなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
HLA全領域のリシークエンシングについて平成28年度請求額とあわせて次年度使用額をあてることが出来るため健常者全症例で測定、解析が行えるようになった。これに加え、全エクソン領域解析で明らかになると予想される遺伝子多型の全症例での解析にも次年度使用額をあてることが出来るため、より詳細かつ正確なデータ解析が行えると考えられる。
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