研究課題/領域番号 |
26460998
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本多 隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10378052)
|
研究分担者 |
後藤 秀実 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10215501)
石上 雅敏 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90378042)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / 分岐鎖アミノ酸 / 脂肪肝 / 脂質代謝 / 肝癌 / コリン欠乏 |
研究実績の概要 |
コリン欠乏高脂肪食 (CDHF) によるNASH病態における糖、脂質、分岐鎖アミノ酸代謝を明らかにすることを目的とした。 C57BL/6J 雄マウス8週齢にCDHFを4週投与する群(CDHF4)と8週投与する群(CDHF8)及びCDHFにコリンを補充したCSHFを8週投与するCSHF8群を作成した。肝臓の遺伝子発現を網羅的に解析するためDNAマイクロアレイにより、脂質、アミノ酸について2倍以上の遺伝子発現を抽出した。更に脂肪酸代謝に関する遺伝子発現について定量PCRで比較した。またメタボローム解析で肝臓の各種代謝産物を測定した。CDHF8群ではCSHF8群と比較して血清ALTとTGは有意に上昇し、血糖は有意に低下していた。肝組織はCDHF4群ではみられなかったが、CDHF8群になりNASHに進展していた。また肝組織中TGおよび肝脂肪滴の面積、肝コレステロールは有意に高値であった。脂質代謝においてCDHF8群ではCSHF8群と比較して8遺伝子が発現亢進し、15遺伝子が発現低下した。分岐鎖アミノ酸において1遺伝子の発現低下が見られた。Fatty acid uptakeを示すCD36は有意な上昇、De novo lipogenesisにおいてFASの有意な上昇、VLDL synthesisにおいてMTP、ApoBの有意な発現低下がみられた。CDHF8群でCSHF8群と比較して、糖代謝においてPDK4の上昇、分岐鎖アミノ酸代謝においてBCKDHaの有意な低下と、BCKDkの有意な遺伝子の発現亢進を認めた。代謝産物ではCDHF8群はCSHF8群及びCDHF4群と比較してPhosphoenolpyruvic acid、Acetyl CoAが低値であった。これらからCDHFによるNASHにおいて分岐鎖アミノ酸と糖代謝の低下がみられた、一方脂肪酸の取り込み増加、肝外への脂肪酸の排泄が低下することで肝脂肪蓄積及び肝コレステロール増加と肝線維化がみられ、NASHを呈した可能性が示唆された。 また20週齢雄マウスに12週CDHFを投与した実験では発癌は起こらなかったが、1%DSSを同時に投与した群では腸管の炎症が惹起され、NASHの線維化及び発癌が促進された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究結果はすでに国内および国際学会で発表済みであり、学術論文として投稿中である。また、派生した腸管の炎症を惹起したNASH肝癌モデルにおいても論文を発表した。このモデルにおいてアミノ酸代謝をしらべることで、NASH肝癌における機序およびそのような病態の違いにおけるアミノ酸代謝についても検討できると考える。このように本研究は当初の予定通りに順調に研究が進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
CDHFによるNASHモデルが確立され肝癌についても確認された、CBDK欠失マウス(BCAA欠乏マウス)に対してCDHFを現在投与している、このモデルにおけるBCAAの代謝を確認する。またNASH肝癌と分岐鎖アミノ酸の代謝についてもBCAA投与の効果を確認する。また他のNASHモデルとしてHF+フルクトースを投与たモデルでのBCAA代謝の解析を行う。ヒトの肝硬変に対するBCAA投与により肝脂肪の低下作用を確認する医師主導型臨床研究の結果をまとめる。
|