研究課題
1. 肝移植後非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)再発の危険因子解析:当施設において2011年12月までに行われた肝移植症例のうち、18歳以上の原因不明の肝硬変に対する肝移植症例28例について、移植後の脂肪肝やNASHの発症ならびにこれらに関与する因子についての解析を行った。その結果、肝移植後5年での脂肪肝発症率は69%、NASH発症率は41%と高率であった。肝移植後NAFLD再発の危険因子について解析を行ったが、有意な因子は同定されなかった。2. 膵切除後のNAFLD発症の現状と危険因子解析:2006年から2013年に当院で行われた膵切除例423例におけるNAFLD発症の現状と危険因子の解析を行った。膵切除後3ヶ月以内の高度の脂肪肝発症例は43例(10.2%)であった。高度脂肪肝発症の予測因子は、原疾患が膵癌であること、術式が膵全摘出または膵頭十二指腸切除であることであった。3. ヒトNAFLD肝癌におけるゲノム異常の解析:ヒトNAFLDに肝癌を合併した症例に対する肝切除例の肝組織にて、次世代シークエンサーを用いた全エクソンシークエンス、特定の遺伝子のターゲットシークエンス、ならびに染色体コピー数解析を施行した。その結果、NAFLD肝癌では11検体中9例でTERTプロモーター変異が認められた。加えて、CTNNB1、TP53などの既知の肝癌関連遺伝子の変異が同定された。さらに、FGA、SYNE1においても複数検体で変異が生じていることが明らかになった。網羅的な染色体コピー数解析の結果、NAFLD肝癌では染色体1q、8q領域の増幅、ならびに染色体1p、4q、6q、8p、13q、16p、17p、18q領域の欠失が多いことが明らかになった.特に、8p欠失がすべての検体で認められており、NAFLD肝癌の特徴的な遺伝子変化であると考えられた。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Int J Cancer
巻: 139 ページ: 2512-2518
10.1002/ijc.30379