研究課題
背景及び目的:Forkhead Box M1(FoxM1)転写因子は、種々の癌組織で過剰発現しており、ヒト肝細胞癌手術組織を用いた検討により、腫瘍部では非腫瘍部に比してFoxM1の発現が約10倍と著明に亢進しており、腫瘍部におけるFoxM1発現が術後の生存率及び再発を規定する独立因子であることを明らかにしている(論文投稿中)。そこで、今回、FoxM1を肝臓特異的に発現誘導させることが可能なトランスジェニックマウスを作成し、FoxM1分子が発現することが肝発癌に関与するのかを明らかにすることを目的とした。方法:テトラサイクリン誘導体であるドキシサイクリン(DOX)投与により発現が誘導されるTet-Onシステムと臓器特異的Cre-LoxPシステムを組み合わせることにより、任意の時期に任意の組織でFoxM1の発現誘導が可能なトランスジェニックマウス(FoxM1 inducible Hepatocyte-specific transgenic mouse:FoxM1iHepTg )を作成した。結果:1)FoxM1iHepTgマウスにおいて飲水中DOXにより、FoxM1蛋白の発現誘導をウエスタンブロットにて確認した。2)FoxM1iHepTgに対して、飲水中DOXに加え、高脂肪食食餌負荷を行ったところ、負荷4週時点において、対照マウスに比し、脂肪蓄積の亢進を認めた。考察及び結論:肝細胞特異的、時期特異的にFoxM1を過剰発現可能なマウスの作製に成功した。FoxM1過剰発現は、肝脂肪蓄積に促進的に作用する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今回、肝細胞特異的、時期特異的にFoxM1を過剰発現可能なマウスの作製に成功し、計画通り、脂肪肝モデルにおいて、その影響について検討を加えることができた。この結果、予想外に、FoxM1が肝脂肪蓄積に対して促進的に作用することを見出した。実験系の確立とともに、その表現型の結果も得ている点、実験計画は順調に遂行できていると考える。
今回、確立したマウス実験系を用いて、今後、1)FoxM1が肝脂肪蓄積に与える影響とその分子機構 2)脂肪性肝炎を背景とした肝発癌 に対する影響を詳細に検討する。さらに、マウス及びヒト肝癌細胞株を用いて、その詳細な分子機構を解析することを計画している。
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