研究課題
NAFLD診断、進行度予測、治療への臨床応用に向けて、血清中のDlk1-Dio3 matクラスター内miRNAの発現検討を進めた。検討対象は、クラスター内において、パイロット研究において、健常者とNAFLD患者との血清内で最も大きな発現差が認められ、かつ臨床所見との関連が認められた、miR-379とした。出来るだけ多数の検体を集めるため、多施設での共同研究を行った。各施設倫理委員会の許可を得て、肝生検と同時に採取された、NAFLD患者80例の血清内miR-379の発現をTaqman RT-PCRにて解析し、肝組織の脂肪化および線維化進展度、臨床所見との関連について検討した。健常者との比較において、NAFL患者では血清内miR-379の発現が有意に上昇しており、NASH患者でも上昇傾向が見られたが、こちらにおいては、有意差は見られなかった。これはパイロット研究と矛盾ない結果であった。また、NAFLとNASH患者血清の間に、有意なmiR-379発現差は見られなかった。次に、血清内miR-379発現と、NAFLD患者の臨床所見との比較検討を行うと、パイロット研究での結果と同じく、血清総コレステロールと、そして、新たにLDL-Cとの間に正の相関が見られた。この傾向は、NASHの組織学的進展度Brunt stage が0もしくは1群でさらに明らかとなった。結論として、miR-379は、広い疾患スペクトルを持つNAFLDのうち、NAFLにおいて特に強く発現していた。また、NASHにおいて、その発現強度は血清総コレステロールおよびLDL-Cと正の相関があり、疾患進展度の低い群において特に明らかであった。今後更に多数での検討を行うことで、Dlk1-Dio3 matクラスターmiRNAのNAFLDへの影響が明らかになり、臨床応用への可能性が示唆された。