研究課題
病理学的に慢性非化膿性破壊性胆管炎を炎症の首座とするPBCにおいて胆管細胞が免疫細胞から攻撃を受ける機序の一つとして、胆管細胞では、細胞周囲環境の変化に応じてインフラマソームが活性化され、タンパク分解速度を規定するオートファジーに異常を来たし、胆管細胞における自己抗原提示が亢進していることが想定される。本年度は、まずPBC(n:20例)と対照肝疾患(慢性C型肝炎、n:12例)での胆管細胞におけるインフラマソームであるNLRP3とAM2の発現を免疫染色で検討した。その結果PBCの胆管細胞において胆管炎の亢進とともに特にNLRP3の有意な発現亢進を認めた。そこで次に、NLRP3によって誘導される炎症性サイトカインであるIL-1bの胆管細胞からの産生条件を検討した。IL-1bの産生には、まずpro IL-1b産生が必要条件となる。今回の検討の結果、疎水性胆汁酸(CDCA,DCA)は酸性環境で胆管細胞はpro IL-1b産生を行う事が明らかとなった。また、この条件下でIL-1b産生に必要なインフラマソームであるNLRP3の発現が亢進することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初の目標であったインフラマソームの解析をPBCと対照肝疾患(慢性C型肝炎)で比較検討を終了し、PBC胆管細胞でのNLRP3発現亢進を明らかにすることができている。次年度はNLRP3発現亢進が胆管病変の進展をどのように修飾するか診ていくためのスムーズな足がかりができたと考えている。
2014年度は、酸性環境における疎水性胆汁酸刺激でNLRP3の発現が亢進するということがあきらかになったので、2015年度はこの環境下で標的となる胆管細胞と攻撃する免疫細胞との関係について明らかにしていく予定である。特に、NLRP3発現亢進が胆管病変の進展をどのように修飾するかを中心に診ていく方策を立てている。
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