研究課題
これまでに病理学的にPBC胆管細胞でのIL-1b産生を免疫染色で確認して来た。そこで今回はPBC病態を模倣するin vitro培養細胞系の中で、IL-1b産生の条件を検討した。一般にIL-1bは、pro IL-1bがNLRP3によって活性化されるカスパーゼ1によって切断され、成熟したIL-1bとして細胞外に放出される。(1)PBC胆管細胞が病理学的にIL-1b産生を認める。(2)PBC胆管細胞ではNLRp3発現が亢進する。(3)ELISAレベルでは、生体外胆管炎再構築系を用いた培養実験で胆管細胞が疎水性胆汁酸によってNLRP3発現亢進し、培養上清中にIL-1bを産生する。以上を明らかにした。しかし、ELISAではpro IL-1bとIL-1bの区別が出来ないため、改めてWB法を用いてIL-1bの産生を検討した結果、胆管細胞はpro IL-1bを放出するが、成熟型のIL-1bを産生しない事が明らかになった。成熟型産生を促すためのATP添加やERストレスの誘導も無効であった。そこで本研究課題のPBCの胆管細胞から明らかにする発症機序と治療への応用の基本に立ち返り、再度生体外胆管炎再構築系を用いた培養実験を行った。その結果活性化NK細胞が大量に存在すると胆管細胞は傷害され自己蛋白が放出され単球系細胞が貪食し自己反応性T細胞へ抗原提示をすること、NK細胞が少量存在した場合NK細胞が産生するIFN-gによって胆管細胞がHLA class I発現を亢進させるため、以降のNK細胞による胆管障害が起きにくい環境になることが新たに明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
胆管細胞は自身が傷害される過程でpro IL-1bを放出することが明らかになった。胆管細胞由来のpro IL-1bは細胞外でプロテアーゼ等によって成熟型IL-1bに切断される事が予想され、それを示すための培養系の樹立を行っている。また、NK細胞がIFN-g産生と胆管細胞からの自己抗原放出を促す事で、獲得免疫への橋渡しを担うことが明らかとなり、IFN-gを鍵とした治療への応用を示すための培養系樹立を試みている。
PBC胆管細胞は陰イオン交換体の先端膜での発現が低下するため、重炭酸イオン分泌が損なわれ、疎水性胆汁酸による傷害を受けやすくなる事が近年報告されるようになった。そこでこれまでに樹立した生体外胆管炎再構築系を用いて、AE2発現制御による胆管細胞の表現形を明らかにするとともに、AE2発現制御を司る鍵分子の同定を試みる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 10件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Hepatology
巻: 62 ページ: 1817-1827
Hepatol Res.
巻: 45 ページ: 1203-1210
J Gastroenterol Hepatol.
巻: 30 ページ: 1309-1316
Intern Med.
巻: 54 ページ: 567-572
J Viral Hepat.
巻: 22 ページ: 992-1001
巻: 30 ページ: 1759-1767
Transpl Infect Dis.
巻: 17 ページ: 702-706
PLoS One.
巻: 24 ページ: 1-8
Diagn Microbiol Infect Dis.
巻: 83 ページ: 232-233
World J Hepatol.
巻: 18 ページ: 2688-2695