PBC患者では陰イオン交換体2(AE2)の発現低下と治療による回復を認め、AE2ノックアウトマウスではPBC様の胆管炎が出現することから、胆管細胞でのAE2発現低下をもたらす環境因子とAE2発現が低下した胆管細胞の表現形を明らかにすることを目的とした。PBC環境を模倣した培養系を用いて検討した結果、胆管細胞は自然免疫リガンドと疎水性胆汁酸の暴露により細胞内酸化ストレスが亢進するとともにAE2発現が低下し、前炎症性サイトカインであるIL-6やケモカインの産生が亢進することが明らかになった。胆管細胞でのAE2発現をsiRNAで落としても同様であった。またAE2発現が低下した胆管細胞周囲には自己免疫細胞が有意に遊走することも明らかになった。PBCの病態を増悪させる因子として、ケモカイン・細胞接着分子として知られるCX3CL1の発現が胆管細胞で亢進することが知られているが、胆管細胞は疎水性胆汁酸による暴露に加えて、主に免疫細胞から産生されるIFN-gの存在でCX3CL1産生を亢進させるとともに、更にAE2発現が減弱することが明らかになった。またこのようなPBC模倣環境では胆管細胞の老化を認め、一連の現象は細胞老化関連分泌現象であることが示唆された。最後にPBC胆管を正常胆管や肝炎症例の胆管と病理的に比較した結果、PBC胆管では酸化ストレスが亢進しAE2発限低下を認めた。またPBC胆管の中でも胆管炎活動性が高いほどAE2発現は低下していることが明らかとなった。 以上の結果から、AE2発現に注目することにより、自然免疫リガンドと疎水性胆汁酸刺激による胆管炎の進行と、免疫細胞からのIFN-g刺激が加わることによる悪性サイクルの完成が明らかとなった。
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