研究課題
本研究では、CCl4急性肝障害モデルにおいて、その修復期における肝マクロファージの役割について検討した。CCl4投与2日目にMCP-1発現が誘導され、4日目以降にF4/80陽性マクロファージの浸潤がみられた。このF4/80陽性マクロファージの大部分はCD68陽性で高い貪食能を有していた。またCCl4投与2日後にClodronateにてマクロファージを欠損させたところ肝障害が遷延化したことから、この貪食能優位のCD68陽性マクロファージは抗炎症性に作用し、また傷害組織の修復において重要な役割を果たしていることが推測された。そこで、マクロファージ欠損マウスにおいてCCl4肝障害の回復期における線維形成を評価したところ、マクロファージ欠損では線維形成が抑制されるとともに、MMP13の発現も抑制されていた。GpnmbはCCl4誘導肝障害モデルにおいて肝浸潤マクロファージに発現する。CCl4投与後4日以降に傷害肝に浸潤していたCD68陽性マクロファージの約半数にGpnmbが発現しており、CD68+Gpnmb+マクロファージはCD68+Gpnmb-マクロファージに比してより高い貪食能を有していた。そこで、Gpnmb発現を欠損したDBAマウスにCCl4急性肝障害を誘導したところ、肝障害の程度には差がみられなかったが、修復期における線維形成が抑制され、MMP9, MMP13, TIMP-1の発現はいずれも低下していた。一方、単離した肝マクロファージにおいて、貪食刺激はGpnmb発現に影響を及ぼさなかったが、貪食およびGpnmg発現抑制によって培養上清中MMP13が増加した。一方、Gpnmb発現抑制はMMP13 mRNAの発現レベルには影響を与えなかったことから、MMP13の分泌に関与していることが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、Gpnmb欠損マウスからの単離肝マクロファージを用いて、その傷害肝の修復における役割について、線維形成と吸収の両者に重要な役割を果たしていることを証明した。本研究の成果の一部を論文化した。
傷害肝の修復期に浸潤している貪食能優位のマクロファージが線維形成および吸収を介して、その修復に重要な役割を果たしていることが推測された。また、これらのマクロファージに発現するGpnmbはMMP13の発現に関与していることが明らかとなった。今後は、これらの修復期のマクロファージに及ぼすHGFなどの肝再生促進因子の及ぼす影響、マクロファージの線維形成および吸収の制御機構の解明、およびGpnmbの役割に関する研究を欠損マウスを用いて進める予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Molecular Medicine Reports
巻: 12 ページ: in press