本研究では、四塩化炭素単回投与による急性肝障害モデルの修復過程ではMCP-1が発現し、高い貪食能を有するCD68要請マクロファージが浸潤した。一方、これらのマクロファージを欠損させると肝障害が遷延化し、傷害肝の修復が遅延した。Gpnmbはこの急性肝障害モデルにおいて、肝浸潤マクロファージに発現する。四塩化炭素投与4日以降に傷害肝に浸潤するCD68陽性マクロファージの約半数にGpnmbが発現しており、CD68陽性・Gpnmb陽性マクロファージはGpnmb陰性マクロファージに比して高い貪食能を有していた。そこで、Gpnmb欠損マウスを用いて四塩化炭素肝障害を誘導したところ、修復機における繊維形成が抑制され、線維形成に関わる分子の発現変化が認められた。なかでも、GpnmbはMMP13の発現を介して、傷害肝の修復過程における線維形成および線維吸収の制御に関与していることが考えられた。 一方、四塩化炭素単回投与2日後に同種肝癌細胞を脾臓に摂取すると肝臓内に多数の癌結節が形成され、その癌結節周囲にはGpnmb陽性マクロファージが集簇し、血管内皮増殖因子(VEGF)を発現していた。そこで、肝癌結節周囲に集簇しているマクロファージが産生するVEGFの役割を検討するために、本モデルに抗VEGF中和抗体を投与したところ、肝癌結節の発生数は減少したものの、有意差は得られなかった。 本研究の遂行によって、傷害肝の修復にはGpnmb陽性マクロファージが重要な役割を果たしており、抗炎症および線維形成・吸収にあずかる組織修復マクロファージが肝癌結節の発育・進展に関与していることが明らかになった。
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