研究課題
B型肝炎ウイルスはエンベロープで覆われた不完全二本鎖DNAウイルスであり、急性または慢性肝炎の原因となり、B型慢性肝炎の多くは肝硬変、さらには肝細胞癌へと進行する。HBVの排除には感染細胞を選択的に破壊することの出来る機能的なHBV特異的CD8+T細胞応答が必要不可欠である。しかしながら、そのようなT細胞応答がどのような機序で誘導されるのかは明らかにされていない。申請者らの研究から、HBV 特異的T細胞が肝細胞表面に提示された抗原を認識することにより、それらの機能が抑制されること、さらに、特殊抗原提示細胞である樹状細胞を活性化することにより、この機能抑制を解除できるということが示されていた。この過去の研究をふまえ、本研究では、活性化樹状細胞が、どのような分子学的機序でHBV特異的免疫寛容を克服し、機能的なHBV特異的T細胞応答の誘導するのかを明らかにするとともに、機能的HBV特異的T細胞応答を誘導するために効果的な自然免疫シグナル伝達経路を同定することを目的とした。この3年間の結果から、機能的HBV特異的T 細胞応答の誘導には、骨髄由来細胞による抗原提示が必要であるが、骨髄由来細胞による抗原提示は機能的HBV特異的CD8+T 細胞応答の誘導に十分でなく、肝細胞による抗原提示が細胞の増殖と機能分化、特に細胞傷害能の誘導に必須であることが示された。肝臓はこれまで免疫寛容を誘導する臓器と考えられてきたが、本研究の結果から、肝臓はウイルス特異的T細胞が増殖するためにも必要な臓器であることが初めて示された。 これらの研究は、自然免疫の活性化がどのようにHBV特異的T細胞応答の誘導につながるのかを解明するのみならず、B型慢性肝炎に対する新しい免疫治療の開発を促進するものと期待される。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 8件)
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