研究課題/領域番号 |
26461017
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
吉治 仁志 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40336855)
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研究分担者 |
北出 光輝 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40526795)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝線維化 / 肝前駆細胞 / アンジオテンシン受容体阻害薬 / 肝再生 |
研究実績の概要 |
今年度は肝前駆細胞 (HPC)とアンジオテンシン受容体阻害薬 (ARB)の相互作用について主にHPC細胞株を用いて検討を行ない、次年度からの生体での検討に向けた基礎的データを得る事ができた。肝星細胞 (HSC)はHPCのniche構成細胞としても知られており、HPCとHSCのinteractionが肝線維化など障害肝の再生過程において重要な役割を果たすことが示唆されている。我々はこれまでの基盤研究においてangiotensin-II receptor blocker (ARB) の肝線維化抑制効果について報告してきた。今年度は、ARBにより肝線維化を制御した際のHPCの分化運命および肝再生効率について検討すると共に、in vitroでのHPCとHSCのinteractionにつき解析した。マウスに、HPCを強く誘導する5- diethoxycarbonyl- 1,4- dihydrocollidine (DDC)を4週間投与してHPC増加を伴う実験的肝線維症を作成した。本モデルにARBであるLosartan (7.5mg/kg/day)を投与してHPCの分化効率、およびHSCとの関連をA6、CK19、およびαSMA免疫染色にて解析した。その結果、肝線維化進展に伴うHSC活性化はHPCの分化運命を胆管細胞に向けていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitro実験系においては、HSC株 (LX-2) のconditional mediumによるHPC株の分化誘導効率につき検討した。その結果、DDC投与によりHPCの著明な増加を伴う肝線維化の進展が見られた。ARBの投与により肝線維化が著明に抑制されると共に、有意な肝重量増加が見られたことからARBによる効率的な肝再生促進が示唆された。肝線維化進展に伴ってA6陽性、CK19陽性のHPCはαSMA陽性HSCに取り囲まれるように増加したが、ARB投与にてHSCは線維化と平行するように減少し、A6陽性、CK19陰性のHPC由来新生肝細胞数が有意に増加した。一方、in vitro実験系においてHSC由来のconditional mediumによりHPCの胆管細胞分化が促進され、肝細胞分化能は著明に低下した。本研究結果は当初予定していた初年度の研究目標をほぼ達成していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究より、肝線維化を制御することによってHPCの分化運命が胆管細胞から肝細胞に向き、HPC依存性の効率的な肝再生が促進されることが示唆された。次年度以降は in vitro で得られた成果に基づいてin vivo での検討を中心に解析を行う。肝線維化進展に及ぼす影響について、HPC誘導を強く認めるDDCモデル、および汎用されている四塩化炭素モデルなどを用いて検討を行う。ARBは臨床用量に匹敵する低用量で連日投与とし、単独投与および併用投与群について経時的に肝線維化の進展および肝線維化に関わる因子について複数の視点から検討を加える。線維化評価項目としては、イメージアナライザーによる定量に加えて collagen 量などについても検討する。HSC に対する作用としては α-SMA 免疫染色、TGF-β などを測定する。これらの次年度からの継続的研究により本研究の目的である肝前駆細胞 (HPC)とARB併用投与による効率的肝再生を伴う肝線維化抑制治療法の開発に向けた基礎的データが得られるものと考える。
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