研究実績の概要 |
今年度は昨年度に行った肝前駆細胞 (HPC)とアンジオテンシン受容体阻害薬 (ARB)の相互作用に加えて、HPCの分化運命を胆管上皮細胞に向けているNOTCHを特異的に阻害するNOTCH1阻害薬を用いて生体における肝線維化抑制効果について検討し成果を得た。我々はこれまでの本基盤 研究において、障害肝においてNOTCH1を制御すると肝前駆細胞(HPC)の分化運命が胆管上皮細胞から肝細胞に向かうことにより効率的な肝再生をきたす事を報告してきた。今回は、マウス肝線維化モデルにおける新規NOTCH1選択的阻害剤による肝再生治療の可能性について検討した。マウスに、HPCを強く誘導する5- diethoxycarbonyl- 1,4- dihydrocollidine (DDC)を4週間投与してHPC増加を伴う実験的肝線維症を作成して多方面からの解析を行った。また、マウスHPC株におけるNOTCH1阻害剤の肝細胞分化効率についてもin vitroで解析を加えた。その結果、NOTCH1阻害薬投与群では有意な肝重量増加、血清T-bil値低下を呈し、NOTCH1制御による肝再生促進が示唆された。組織学的検討を行ったところ、両群ともA6/CK19両陽性HPCが見られたが、NOTCH1阻害薬投与群においてA6陽性・CK19陰性の新生肝細胞数が増加する一方、A6/CK19両陽性新生胆管数は減少していた。また、マウスHPC株の肝細胞分化効率は、NOTCH1阻害剤の投与によって増加した。これらの結果より、NOTCH1制御によってHPCの分化運命が胆管上皮細胞から肝細胞に傾き、その結果肝再生が効率的に行われた事が示唆された。以上の結果より新規NOTCH1阻害剤による肝線維化抑制と共に、HPC分化運命制御を介した効率的な肝再生治療の可能性を確認した。
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