研究課題
本研究では、いまだ有効な治療薬のない非アルコール性脂肪肝炎(Non alcholic steatohepatitis ;NASH)において、我々がこれまで基礎的研究にて明らかにしてきた生活習慣病治療薬によるカクテル療法などによる新たな治療法を確立するとともに、これまで明らかにされていないNASHの発症・進展に関わる生活習慣病と凝固線溶系のクロストークをターゲットとし、基礎的・臨床的に研究を進めた。インスリン抵抗性を呈するOLETFラットにブタ血清を腹腔内投与し作成した実験的肝線維化モデルにおいて、高圧剤であるARB(Angiotensin type 1 receptor blocker)製剤、DPP(dipeptdyl peptidase)-IV阻害剤を投与し、各薬剤単独投与が肝線維化に重要な働きをする活性化肝星細胞や線維化における主要な因子であるTGF-β発現を抑制し、肝線維化を抑制した。また、両薬剤の併用は単独投与に比しさらに有意な抑制効果を認めた。同様に、新規経口PAI-1阻害剤においても、ラット肝線維化抑制作用を確認した。さらに糖尿病のない、コリン欠乏アミノ酸食投与肝線維化ラットモデルを用いて、新規経口PAI-1阻害剤を投与し、肝線維化が抑制されることを確認した。In vitroにおいて、PAI-1阻害剤を活性化肝星細胞に添加すると、WST assayでの細胞増殖を抑制し、TGF-β mRNA、α1 collage mRNAの発現抑制を認めたことから、PAI-1阻害による活性化肝星細胞への直接作用により肝線維化進展阻害を認めた。さらに、臨床研究(UMIN 000008068)でDPP-IV阻害は、比較的低いHbA1c値と2型糖尿病患者におけるNAFLDの進行に対する効果を有することを、論文に投稿した(Efficacy of alogliptin in preventing non-alcoholic fatty liver disease progression in patients with type 2 diabetes. Biomed Rep. 2016 Feb;4(2):183-187.)。
2: おおむね順調に進展している
臨床研究(UMIN 000008068)でDPP-IV阻害は、比較的低いHbA1c値と2型糖尿病患者におけるNAFLDの進行に対する効果を有することを、論文に投稿した(Efficacy of alogliptin in preventing non-alcoholic fatty liver disease progression in patients with type 2 diabetes. Biomed Rep. 2016 Feb;4(2):183-187.)。また、基礎実験において、vivoでのPAI-1阻害剤による肝線維化抑制作用が認められ、vitroにおいてPAI-1阻害剤を活性化肝星細胞に添加すると、WST assayでの細胞増殖を抑制し、TGF-β mRNA、α1 collage mRNAの発現抑制を認めたことから、PAI-1阻害による活性化肝星細胞への直接作用により肝線維化進展阻害を認めることが明らかとなり、論文を作成中である。
NASHにおけるARBとDPPIV阻害剤の併用療法やPAI-1阻害による肝線維化進展阻害作用の論文を完成させ、学会などでの発表・講演を継続し、広く世間に認知されることでさらなる臨床応用やNASH治療の発展を望む。また、同様の手法で実臨床において使用可能な他の薬剤でのNASH治療薬としての可能性を探求し、臨床応用を目指す。
実験計画書の計画の如く血管新生に関して動物モデルでの実験追加予定であったが、実験条件の設定に時間がかかってしまったため当該年度内に予定していた動物などを含めた実験の助成金が、次年度に繰り越された。
ラットNASHモデルを用いて、無投与群、ブタ血清投与群、ブタ血清+PAI-1阻害剤投与群の 3 群を設定し肝線維化と血管新生との関連において、肝内新生血管をCD31を指標とした免疫 染色や肝内における主要な血管新生促進因子であるVEGF発現をReal time PCR法、ELISA法で評価し新規経口PAI-1阻害剤の血管新生阻害作用について検討を加える。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
J Gastroenterol.
巻: 未定 ページ: 未定
Biomed Rep.
巻: 4 ページ: 183-187
巻: 51 ページ: 162-172
Mol Med Rep.
巻: 11 ページ: 1693-1700
http://www.naramed-u.ac.jp/~3int/