研究実績の概要 |
胆汁酸は様々な腸内細菌によって,腸管内で特徴的な構造変換を受けた後に再吸収され,その一部が末梢血液中にも存在する。本研究は,それらの多様な胆汁酸および胆汁酸誘導体に着目し,ヒトにおける腸内細菌叢の経時的なモニター方法としての胆汁酸分画分析の有用性を検討することを目的としている。 平成26年度までに,HPLC-MS/MSによる胆汁酸一斉分析の基礎を確立することができたため,平成27年度は,ヒトの血清および便から実際に胆汁酸を抽出して一斉分析を行い,両者の比較を行った (n=30)。その結果,非抱合型の胆汁酸に関して,便中濃度 (%) と血中濃度 (%) の間に有意な相関が認められた胆汁酸は,cholic acid (r=0.496, P<0.01), chenodeoxycholic acid (r=0.515, P<0.01), ursodeoxycholic acid (r=0.887, P<0.0001), hyodeoxycholic acid (r=0.371, P<0.05), 3epi-cholic acid (r=0.399, P<0.05), 3epi-lithocholic acid (r=0.372, P<0.05), 12epi-cholic acid (0.396, P<0.05), 7oxo-deoxycholic acid (r=0.756, P<0.0001), 12oxo-chenodeoxycholic acid (r=0.478, P<0.01), 7oxo-lithocholic acid (r=0.541, P<0.005), 12oxo-lithocholic acid (r=0.533, P<0.005)の11種類であった。 以上より,これらの血中胆汁酸が,便中の胆汁酸ひいては腸内細菌叢をある程度反映する可能性が示唆された。
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