研究課題
肝細胞は自己再生能を有し、肝切除などの傷害時にはstem cellが再生に寄与すると推定されている。さらに胚性幹細胞の特徴である多分化能と自己複製能の維持に関与するstemness遺伝子が肝癌の発症にも関与している可能性が示されている。なかでも、Non-alcoholic fatty liver disease(NAFLD)においてはNanogが、Insulin-like growth factor (IGF)を介した肝癌幹細胞の自己複製に関与すると報告されている。われわれは肝切除標本を用いて、NanogやEpCAMなどの癌幹細胞マーカー発現を検討した。C型肝炎による肝炎を基盤に発症した肝癌(HCV-HCC)と非アルコール性脂肪肝炎による肝癌(NASH-HCC)を比較し、NASHに特有のマーカーとなるかも検討した。NanogはNASH-HCCにより発現し、EpCAMは線維化の程度と相関し発現することを見出した。NAFLDの進展に関しては、肝組織所見でのバルーニングが注目されてきたが、肝線維化が予後を規定することが報告された。すなわち、肝線維化抑止が肝癌の予防の上でも非常に重要である。これらstemness遺伝子がコードする蛋白を含めたNASHの線維化や肝癌に関与する蛋白発現を検討するために、肝切除時に摘出した肝癌の癌部・非癌部の凍結標本の一部をホモジナイズし、iTRAQを用いた相対定量で解析した。iTRAQとは、2004年にAppliedBiosystemsのPhilip L. Rossらが発表したもので、複数のサンプル間でタンパク質の存在量を網羅的に比較することができる。現在までに約4000例の蛋白を抽出し、有意性の検討を行っている。
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