研究課題
本研究の目的は,Wntシグナル伝達系の中枢転写因子であるTCF-4に内在する「SxxSS」という機能モチーフが,Wnt5a/b(とくに5a)の産生および上皮間葉移行(EMT)誘導に関わっているか否かを明らかにすることである.平成26年度は,このモチーフを持つTCF-4アイソフォームであるTCF-4K(Exp Cell Res 2011)を用いて上記の検討をおこなった.すなわち,TCF-4Kに内在する「SxxSS」モチーフのセリン残基(S)をsite-directed mutagenesisでアラニン(A)に置換した下記の変異体を作成し,それぞれ過剰発現細胞におけるWnt5a/b発現等を評価した.変異体はK-mutant 269A (AxxSS),K-mutant 272A (SxxAS),K-mutant 273A (SxxSA)である.まずreal-time PCRではK-mutant 269AにおいてWnt5aおよびWnt5b,Wnt3a,ROR2の発現が最も強く認められた.とりわけWnt5a mRNAの発現レベルはコントロールの40~45倍と高く,Western blotでも高発現が確認された.ChIPアッセイではK-mutant 269Aのwnt5a promoter領域への直接結合が確認されたことより,TCF-4はその構造に内在する「SxxSS」モチーフ依存的にWnt5aの発現を調節している可能性が示唆された.Wnt5aはEMTに関与していることより,Wnt5aをノックダウンし,EMT調節因子であるSnailやSLUGの発現を検討した.その結果,SLUGの発現が顕著に低下していた.このことから,TCF-4は「SxxSS」モチーフ依存性にWnt5aの発現調節を介しEMTを制御している可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
およそ予定通りに進んでいるが,Wnt5a gene silencingを恒常的におこなうシステムを使用するに至らなかった点が不足していた.
Wnt5a gene silencingを恒常的におこなうシステムを使用することで,これまでに得られた所見を強固にしていく行程が必要である.また,ヒト肝細胞癌におけるWnt5aやROR2の発現の検討をおこなっていきたい.
次年度以降におけるプロテオミクスに重点的に予算を使用したかったことと,H27年度において複数回の海外(米国,ヨーロッパ)における成果発表をおこないたかったことが,その理由である.
プロテオミクス,および複数回の海外(米国,ヨーロッパ)における成果発表に次年度使用額を使用する予定である.
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J Gastroenterol Hepatol
巻: 29 ページ: 1830-1838
10.1111/jgh.12622
http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/sentanca/kangan/