研究課題
平成27年度には,Wnt5aとその受容体であるROR2,およびWnt5a発現に関わるTCF-4Kがヒト肝細胞癌(HCC)組織においてどこに局在するかを検討した.まず,Wnt5aはHCC細胞および非癌部肝細胞にはほとんど発現しておらず,腫瘍血管を含む血管内皮細胞に局在していた.一方ROR2は,HCCにも強く発現していたが,とくに小型のHCC細胞に強かった.このことから,HCC細胞も発生過程のごとく特定の時期のみWntシグナルが活性化している可能性が示唆された.次にTCF-4 isoformのHCC組織での発現検討の前に,まずヒト肝細胞癌細胞であるHAK-1Bをsingle cell cultureし,そこから採れてきたクローンについてTCF-4JおよびTCF-4KをPCRで半定量化した.しかしながらK単独ないしJ単独を発現しているクローンは採れず,すべてのクローンで両者が任意の割合で混在した形質を示した.したがって,この両isoformをはじめ,TCF-4 isoform全体(14種)の発現量および組織内局在は極めて検出困難なことが予想された.実際,レーザーマイクロダイセクション(ライカ)を用いて採取した肝癌組織から,QIAamp DNA FFPE Tissue Kitにて抽出したRNAを用いてRT-PCRをおこなったが,混在パターンのみが認められ,JとKとの鑑別は不成功に終わった.そこで再度細胞解析に戻り,癌幹細胞あるいは癌幹細胞様細胞が濃縮されうるsphere formation下でのTCF-4J過剰発現細胞(J細胞)およびTCF-4K過剰発現細胞(細胞)についてWnt5aを含めたシグナル系分子の発現を検討している.予想外にもTCF-4Jがsphere形成下においてのみNotchシグナル転写因子Hes1を強烈に発現していることがわかり,その解析も併せておこなっている.
3: やや遅れている
ヒトHCC細胞株におけるsingle cell cultureをおこなって,それぞれのクローンのTCF-4 isoformを解析したが,すべて混在型であった.この検討は当初の計画になかったが,isoformの発現様式を理解する上で有意義であった.レーザーマイクロダイセクションおよびRT-PCR系の構築はうまくいき,実際に機能したが,ヒトHCC組織におけるisoformの鑑別は残念ながら不成功に終わった.
Wnt5a/ROR2系も含め,同シグナル系と関係が示唆されたNotch-Jagged1/Hes1系へのTCF-4 isoformの関与についても鋭意検討中であり,興味深い所見を得ている.
初年度に比較的効率よく研究が進んだために繰越金額が出たが,年度内の使用金額としたは,ほぼ予定通りである.
最終年度において,Wnt-Notchシグナル相関など新たな課題が出てきたため,その解析に使用する予定である.
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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