研究課題/領域番号 |
26461026
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
原田 大 産業医科大学, 医学部, 教授 (00241175)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝細胞 / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 小胞体ストレス / オートファジー / ウイルソン病 / C型肝炎 |
研究実績の概要 |
脂質に関する検討では、C57BL/6Jマウスに高脂肪食を投与し、12週後の小胞体ストレスとオートファジーを評価した。高脂肪食投与マウスでは小胞体ストレスマーカーであるeIF2αのリン酸化、spliced XBP1の発現上昇とともに、オートファゴソームの指標となるLC3-IIの増加をウエスタンブロットで認めた。また、LC3の免疫染色や電子顕微鏡による評価においても高脂肪食投与マウスの肝においては有意にオートファゴソームが増加していた。培養肝細胞を用いた脂質に関連する検討では、飽和脂肪酸 と不飽和脂肪酸で処理し、小胞体ストレスとオートファジーを評価したところ、飽和脂肪酸でのみ小胞体ストレスの誘導、LC3-IIの増加を認めた。飽和脂肪酸負荷で認められたオートファゴソームの増加を詳細に検討したところ、飽和脂肪酸は小胞体ストレスを介してオートファゴソームとライソゾームの融合を障害した。以上のことより小胞体ストレスを軽減することが脂肪性肝疾患の異常蛋白蓄積を防ぐと考えられた。また、ヒトの組織での検討では非アルコール性脂肪性肝疾患で酸化ストレスとMallory-Denk体(MDB)形成が関与しておりMDBが形成された肝細胞では酸化ストレスが軽減しており細胞の保護反応と考えられた。 肝細胞での銅と酸化ストレスや小胞体ストレスとの関連も明らかなり、銅により酸化ストレスと小胞体ストレスを介して異常蛋白の蓄積が起こり細胞障害に関与することを明らかとした。銅キレート剤のみならず抗酸化剤や化学シャペロンがその軽減に有用であることを明らかとした。また亜鉛は従来腸管上皮の銅吸収抑制のみがその作用と考えられていたが直接肝細胞保護に働く事も明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞における検討は脂質代謝異常、銅負荷、プロテアソーム阻害ともほぼ順調に進行しており飽和脂肪酸負荷にて小胞体ストレスが生じ、小胞体ストレスがさらに脂肪化を起こしたりすること、その時にオートファジーの途中の段階が障害され異常蛋白が蓄積することなどが明らかとなった。 銅負荷に関しては銅が従来言われていた酸化ストレスのみでなく、小胞体ストレスや異常蛋白の蓄積をきたして肝障害を起こすことが明らかとなった。またこれらは銅キレート剤のみならず、抗酸化剤や化学シャペロンにても軽減されることが分かった。また、亜鉛は従来腸管上皮の銅吸収抑制のみがその作用と考えられていたが直接肝細胞保護に働く事も明らかとした。 ただ高脂肪食負荷マウス、DDC負荷マウスならびに高脂肪食・DDC負荷マウスでのラパマイシン等の薬物による効果で予想外の結果が出ており、現在マウスを増やしたり、解析をやり直したりして結果の解釈を考察中である。
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今後の研究の推進方策 |
脂質に関する研究では培養細胞を用いて飽和脂肪酸負荷を行い、それに小胞体ストレスを誘導するタプシガルジンやプロテアソーム阻害剤を加えた状態でトレハロース等でオートファジーを亢進させた状態での細胞でのストレス、細胞死、細胞増殖ならびにDNA損傷の状態を観察する。またマウスの高脂肪食モデルのらびに高脂肪食とDDC同時投与マウスの作成を続けており、絶食、ラパマイシンとトレハロースの状態を検討する予定である。 銅に関してはウイルソン病での発癌が少ないことや急性肝不全の予後が不良であることなどから銅の細胞増殖やDNA損傷への影響を検討する。また銅のみで小胞体ストレスが生じたことからオートファジーが銅による細胞障害を軽減するか否かを検討する。さらにウイルソン病患者での小胞体の状態ならびにDNA損傷も検討する予定である。 C型肝炎に関しても肝生検組織を用いてDNA損傷と発癌の関連を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や抗体をなるべく節約して使用したため残高が生じたと推測されます。まだまだ培養細胞の仕事もマウスの仕事も終了していません。
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次年度使用額の使用計画 |
まだまだ多くのマウスの使用を予定しています。培養試薬、トランスフェクション試薬、抗体、マウスの購入、マウスの飼育に使用させていただきます。
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