研究課題
Alb-CreマウスとLSL-KrasG12Dマウス及びPtenfloxマウスの交配により胎生期の肝幹細胞である肝芽細胞で活性化型Krasの発現とPtenのホモノックアウトを同時に引き起こしたマウス(Alb-Cre;LSL-KrasG12D;Ptenflox/floxマウスは100%の浸透率で肝内胆管癌を生じることが分かっていた。本年度はこのマウスに生じる肝内胆管癌におけるNotchシグナルの重要性を明らかにするためにNotchシグナルの重要な転写因子であるRbpjの条件的ノックアウトマウスをさらに交配したAlb-Cre;LSL-KrasG12D;Ptenflox/flox;Rbpjflox/floxマウスを作製し、検討した。その結果肝門部の胆管癌は抑制されず、肝末梢部での胆管癌の発生は著明に抑制され、肝門部と肝末梢部の胆管癌の発生機序にNotchシグナルが異なる働きを有していることが示唆された。一方この肝内胆管癌における発癌の起源細胞を検討するため、タモキシフェンによってCreの発現を誘導できるAlb-CreERT2マウスとK19-CreERTマウスを用いて異なる時期にKrasG12Dの発現とPtenの欠損を誘導することにより、これらの遺伝子異常が成熟した肝細胞のみに生じた場合は肝内胆管癌は発生せず、胆管上皮に遺伝子異常が生じた場合に肝内胆管癌が発生することが示され、起源細胞胆管上皮細胞であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究により、(1) 肝特異的KrasG12D変異とPtenホモノックアウトにより生じる肝内胆管癌の発癌の起源細胞が肝内胆管上皮であることが示されたこと、(2)このマウス肝内胆管癌におけるNotchシグナルの重要性が肝門部と肝末梢部という部位の違いによって異なることが判明したこと、という二つの重要な知見を得ることができた。
本マウスモデルにおける発癌の分子メカニズムの解明のため、Alb-Cre;LSL-KrasG12D;Ptenflox/floxマウスの肝内胆管癌より初代培養細胞株を樹立に成功しており、Rbpjをこの細胞株においてCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトした細胞を樹立し、遺伝子及びタンパク発現解析によりこのマウス胆管癌におけるRbpjの役割をin vitroで検討する。Alb-Cre;LSL-KrasG12D;Ptenflox/floxマウスのNotchシグナル阻害による腫瘍抑制効果をin vivo及びin vitroで検討する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 23899
10.1038/srep23899
Journal of Gastroenterology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s00535-015-1145-1