研究課題
肝内胆管癌は最難治癌のひとつであり、その分子病態の解明と有効な治療法の開発が急務である。我々はヒト肝内胆管癌で比較的高頻度に亢進が認められる RAS シグナルと PI3K シグナルに着 目し、両シグナルの同時亢進による新規肝内胆管癌自然発症マウスモデルの構築に成功した。胎生期の肝臓における幹 細胞である肝芽細胞に、成体期では主として肝細胞に Cre リコンビナーゼを発現する Alb-Cre マ ウ ス を 用 い て 、 活 性 型 Kras 変 異 を 発 現 ( 条 件 的 KrasG12D 変 異 ノ ッ ク イ ン ; Lox-Stop-Lox(LSL)-KrasG12Dにより導入)し、さらに PI3K-AKT シグナルを活性化 (条件的 Pten ノ ックアウト;Ptenfloxにより導入)する Alb-Cre/+;LSL-KrasG12D/+;Ptenflox/floxという遺伝子型のマウスを作製した。するとこのマウスは約5週齢で肝内胆管癌の前癌病変を発症し、約7週齢で高度に進行した肝内胆管癌により死亡することが明らかとなった。さらにタモキシフェン誘導性のAlbCreERT2マウスを用いて、Kras活性化とPten欠損を誘導したところ、生後10日目に誘導すると肝内胆管癌のみを生じたが、生後8週間で誘導すると肝細胞癌及びその前癌病変のみを生じ、肝内胆管癌を生じなかった。また、肝臓内では胆管上皮に発現するCk19のプロモーター制御下にCreをタモキシフェンで誘導できるCk19CreERTを用いて生後8週齢でKras活性化とPten欠損を誘導したところ、肝内胆管癌前癌病変を生じた。さらに細胞系譜ラベル法によりこれらの肝内胆管癌の起源細胞は胆管上皮細胞であることが示唆された。このマウスモデルは肝内胆管癌の発生進展及び治療法開発の研究に有用である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 23899
10.1038/srep23899