劇症1型糖尿病は急激な発症・ケトアシドーシスの存在・膵島関連抗体が陰性などの特徴を有する1型糖尿病のサブタイプである。自己免疫性膵炎は高齢男性に好発する慢性膵炎の亜型であり高率に糖尿病を合併するが、ステロイド治療が糖尿病の改善もしくは治癒に有効である。 両疾患の発症様式は大きく異なるが、いずれも膵外分泌組織および膵内分泌組織が障害され糖尿病が併存する点で共通する基盤を有する。我々は抗アミラーゼ自己抗体が両疾患に高率に認められることを明らかとした。この結果はアミラーゼが両疾患に共通した新規抗原である可能性を提示している。 そこで我々はアミラーゼをマウスに免疫することでアミラーゼに対する自己免疫反応を有する動物モデルの作成を試みた。雌性非糖尿病マウス(AKR/Nマウス、BALB/cマウスおよびC57BL/6マウス)の前脛骨筋にin vivoエレクトロポレーション法を用いてアミラーゼ発現ベクターを遺伝子導入した。その結果アミラーゼに対する自己抗体が生じ、組織学的にも膵島周囲炎や膵外分泌腺炎が生じた。耐糖能異常は生じなかった。アミラーゼ発現ベクターを導入したC57BL/6マウスではサイズの小さな膵島の増加を認めアミラーゼに対する免疫反応が膵島再生に関連している可能性が示唆された。同様に雌性糖尿病マウス(NODマウス)の前脛骨筋にin vivoエレクトロポレーション法を用いてアミラーゼ発現ベクターを遺伝子導入した。その結果アミラーゼに対する自己抗体が惹起された。アミラーゼ発現ベクターを導入したNODマウスでは糖尿病の自然発症率およびシクロホスファミドによる薬剤誘発糖尿病の発症率のいずれも低下した。一方で膵臓の組織学的所見は変化しなかった。 モデル動物の解析からはアミラーゼに対する免疫反応が糖尿病の発症抑制や膵島再生に関与している可能性が示唆された。
|