研究実績の概要 |
膵臓の間質に存在する膵星細胞は、線維化を病理学的特徴とする慢性膵炎や膵臓癌において病態進展の中心的役割を果たすことが報告され、新規治療標的として注目されている。本研究では、膵星細胞における小胞体ストレス応答を明らかにするとともに、それを介した慢性膵炎・膵癌の病態進展を抑制し得る新規治療法の開発を行う。 昨年まで膵星細胞における小胞体ストレス応答のメカニズムを明らかにするため、Wistar ratより単離した膵星細胞を用いThapsigarginは細胞増殖能を濃度依存性に抑制させ、アポトーシスが促進されることを明らかにした。その機序はPERK、eIF2α経路のリン酸化が促進されていること、それと同時に、分子シャペロン(Grp78, Grp94)、転写因子であるATF4、アポトーシス誘導因子であるCHOPの発現が濃度依存性に上昇することを遺伝子レベル(リアルタイムPCR)、蛋白レベル(Western blot)で証明した。 本年では、膵星細胞の活性化のマーカーであるα-SMA、膵星細胞が産生する細胞外基質(Ⅰ型コラーゲン、fibronectin)、および線維化促進因子であるTGF-βの発現(遺伝子、蛋白)が、Thapsigargin投与により濃度依存性に抑制されることを証明し、膵星細胞においてもThapsigargin誘導性に小胞体ストレス応答が惹起され、その結果、細胞固有機能は抑制されることを明らかにした。そして、PERKリン酸化阻害薬であるGSK2606414投与により、上述したThapsigargin誘導性の小胞体ストレス応答が阻害されることも合わせて明らかにした。
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