研究課題/領域番号 |
26461036
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
坂野 大介 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (40571039)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵β細胞 / インスリン / 自己複製 / モノアミン / 分泌 |
研究実績の概要 |
本研究では、マウス成獣から取り出した膵島を酵素処理により単一細胞にすることで培養する方法を確立した。この培養系を用い低分子化合物スクリーニングを行った結果、ドーパミンD2受容体(Drd2)のアンタゴニストに膵β細胞特異的な細胞数の増やす効果があることを明らかにした。この膵β細胞の細胞数の増加には、細胞複製の促進、細胞死の抑制、また脱分化抑制が複合的に関与することが本研究により明らかとなった。 一方で、ドーパミンをはじめとするモノアミンは小胞型モノアミントランスポーター2(VMAT2)の機能により細胞内で貯留されることから膵臓の発生過程および成獣の内分泌細胞においてVMAT2を失うコンディショナルノックアウトマウスを作成した。 現在、発生期間における膵臓系譜細胞でのVMAT2ノックアウトが生後のβ細胞量に影響するかについて検討している。VMAT2発現が失われることでドーパミン濃度が低下すれば前述のDrd2阻害に類似した影響が生体内でもみられるのではないかと考えている。 膵β細胞でVMAT2がノックアウトするマウスではインスリン分泌の表現型が野生型と異なる結果を得ており更なる解析を進めている。 また、膵α細胞にもVMAT2が存在しており、α細胞でのVMAT2ノックアウトマウスの解析も進めている。過去の研究ではマウス膵島にVMAT2阻害剤を作用させるとインスリン分泌が促進されることが報告されている。このことから膵β細胞の機能調節にモノアミンを介してα細胞が関与していると予想している。これは膵臓という臓器が正常に機能するための細胞間のシグナル伝達の必要性を解く鍵になるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに取り組んでいたVMAT2遺伝子の膵前駆細胞、膵β細胞、膵α細胞でのコンディショナルノックアウトマウスの解析を順調に進めている。 インスリン分泌に対するこれらマウスを使った実験もおおむね順調に進行している。 膵島分散培養実験においてドーパミンD2受容体の機能阻害によって膵β細胞が増殖することを膵β細胞株MIN6細胞を用いた実験において再現できた。 さらにMIN6を用いた関連遺伝子のノックダウンと過剰発現細胞株を樹立できたことは、生体試料を用いるよりもより簡便に分子メカニズムを解析することにつながった。 また、インスリン分泌についてもモノアミンによるシグナル伝達の重要性が大きいことから従来のELISA法よりも時間解像度が高いインスリン分泌解析法としてTIRFM顕微鏡を用いたインスリン分泌減少のライブイメージングを可能にした。これによりインスリン分泌減少について量的な分泌推移と異なる視点からもモノアミンの効果について検証することが出来るようになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれらの制御機構に関連する1)VMAT2によるモノアミンの細胞内貯留量の調節、2)モノアミン、特にドーパミンD2受容体の下流のシグナル伝達の仕組みについて解析する必要がある。 手法としては、マイクロアレイやメタボローム解析を考えており、材料はマウスの発生期および成獣もしくはβ細胞株を用いて研究を進める。 それらの知見を元にヒト膵島での実験も視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年の研究室移転に伴う影響から前年に引き続き当初予定していた動物実験と比べて規模を縮小せざるを得なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
標的とする細胞間シグナル伝達に伴う下流遺伝子の同定を進めるため、マイクロアレイや代謝物解析に重点的に使用する。また、遺伝子の過剰発現、ノックダウン、ノックアウトなど購入可能なプラスミドやRNAiを使用することによりより迅速に結果を得られるように研究を進める。
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