研究実績の概要 |
浸潤性膵管がんの凍結保存検体100 例およびヒト膵がん細胞株19 種類に関してcoverage depth mean 4,685x (607-12,359x)のTarget sequencing を行い、既知のがん関連遺伝子の異常の探索を行った。その結果、腫瘍検体の97% (97/100)で何らかの変異遺伝子が認められ、1検体当り平均1.6つの変異遺伝子が認められた。KRAS変異は全体の96%(96/100)で同定され、腫瘍細胞含有率の推測値は平均31%(2-93%)であった。その他の主要な遺伝子変異としてTP53 (42%, 42/100), SMAD4 (13%, 13/100), CDKN2A (7%, 7/100)の変異が認められた。また、細胞株の全例でKRAS変異が同定された。KRAS陰性4例のうち、1例ではCDKN2A及びTP53遺伝子の変異が同定されたが、残り3例では遺伝子変異は同定されなかった。 これら4例のうち十分量のゲノムDNAが得られた3例(P013, P030, P096)について次世代シークエンサーを用いた全エクソンシークエンス解析を行った。その結果、2例(P030, P096)で体細胞変異が同定された。また、KRAS変異陰性4例を含めた13例について全RNAシークエンス解析を行った。その結果、白血病や肺がん等で知られる既知の遺伝子融合は検出されなかった。また、KRAS陰性例で共通にみられる遺伝子融合は存在しなかった。しかしながら、各例には1-6個の融合遺伝子候補が検出されたため、これらはKRAS陰性膵がんの発生に関わる可能性がある。
|