研究課題
本研究の目的はKRAS変異陰性膵がんにおける治療標的となりうる遺伝子異常を同定することである。そこで、KRAS変異陰性膵がんについて治療標的となりうる遺伝子異常の同定を行い、同定された遺伝子異常について、より症例を拡大し、頻度を明らかにする方針とした。昨年度までに同定されたKRAS変異陰性膵がん3例について次世代シークエンサーを用いた全エクソンシークエンス解析を行った。その結果、1例でドライバー変異と考えうるRASファミリー遺伝子の活性化変異が同定された。また、KRAS変異陰性4例を含めた13例について全RNAシークエンス解析を行った。その結果、膵がんでは報告のないDCTN1-ALK融合が1例において見られた。免疫染色解析の結果は、ALK融合タンパク質発現を支持するものであった。よって、免疫染色法が当該遺伝子融合の診断に有用であることが示唆された。しかしながら、さらなる解析症例の調査では、当該融合は陰性であったことから、その頻度は高くないと判断した。Ba/F3細胞を用いた機能アッセイにより、DCTN1-ALK融合はがん化ドライバー能を持ち、既存のALKキナーゼ阻害薬であるcrizotinib, alectinibに感受性を示すことが明らかになった。よって、KRAS変異陰性の膵がんの一部では、druggableながん遺伝子異常が生じ、治療標的となることが明らかになった。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
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