研究実績の概要 |
胆道がんは、早期発症の臨床症状に乏しくかつ浸潤性が高いことから、多くの症例では進行期で発見されることになり、その予後は不良の難治がんである。本研究では、これまでの化学療法での治癒は困難とされる胆道がんについて、がんのドライバーとなっている新しい治療標的遺伝子を同定し、革新的な診断と分子標的治療の基盤を確立することを目的としている。 昨年度までに160症例の胆道がん凍結検体の全RNAシークエンス解析データ(肝内胆管がん109症例、肝外胆管がん40症例、胆嚢がん11症例)を取得することが出来た。それにより、受容体キナーゼ融合遺伝子として4種類のFGFR2融合遺伝子(FGFR2-AHCYL1, FGFR2-BICC1, FGFR2-KCTD1, FGFR2-TXLNA)を同定し、FGFR2融合遺伝子を導入した細胞株に対して低分子FGFR阻害剤がコロニー形成を抑制することを示した。更に、cAMPプロテインキナーゼの触媒サブユニットがATP1B1-PRKACA, ATP1B1-PRKACBという融合遺伝子を形成して腫瘍で強発現しており、PKA分子経路の活性化が胆道がんにおける重要なドライバー分子経路であることを明らかにした。 本年度は、FGFR2融合遺伝子陽性の胆道がん対する治療開発を進める上での分子診断系の開発を行なった。ホルマリン固定標本(FFPE)を用いたFGFR2遺伝子のBreak-apart FISH法による検出に加えて、FFPEサンプルからRNAを抽出してAMP法 (anchored multiplex PCR)と次世代シークエンスによるFGFR2融合遺伝子分子の単離同定を行なうことに成功した。これにより、ホルマリン固定によってRNAが断片化してしまっているものの日常診療で入手しやすいFFPEを用いて、FGFR2融合遺伝子の分子診断を大きなコホートで行なうことが可能となった。
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