タラポルフィンナトリウムによる光線力学的治療:PDTの対象となり得る化学放射線後の再発性食道癌を想定して、癌幹細胞様の性質を持つ扁平上皮細胞株を見つけ出し基礎実験を行った。特にCD44vの発現が高い癌幹細胞においては、CD44v~シスチントランスポーター~グルタチオンを標的とし、酸化ストレス抵抗性を減弱することにより、PDTの効果を高めることが治療戦略の基盤となり得る。昨年、この目的でPimozideをOSC-19、HSC-2及びHSC-4細胞に添加してMTS assayを行なったが、PDTの効果を増強する効果は認められなかった。このためグルタチオン合成阻害剤を添加してMTS Assayを行なったが、PDTの効果の増強はほとんど認められなかった。このことより、グルタチオンに依存しないPDT抵抗機構の存在が予想された。また胃癌細胞株MKN-45及びMKN-74細胞に対してMTS Assayを行なったところ、MKN-74細胞においてPDT抵抗性が認められた。real-time PCR及びWestern Blottingで、MKN-74細胞のCD44vの発現が低いことが確認されたことからも、CD44v~グルタチオンに依存しないPDT抵抗機構の存在が裏付けられた。過酸化水素に対する抵抗性は既報通りCD44v発現量に依存することがOSC-19、HSC-2及びHSC-4細胞を用いたMTS Assayで確認されており、この酸化ストレスに対する応答性の違いはPDTで発生する活性酸素は一重項酸素であり、過酸化水素とは異なる活性酸素種であることに起因すると推測される。MKN-74細胞は低比重リポタンパク受容体LDL-Rの発現が低いことが確認できており、現在LDL-R発現とPDT抵抗性の関連を確認中である。
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