研究課題/領域番号 |
26461047
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
熊谷 洋一 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (80611087)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エンドサイトスコピーシステム / 食道癌 / 食道炎 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
超拡大内視鏡GIF-Y0002は光学的に連続して380倍まで拡大可能である。生体染色を行うことで細胞の観察が可能であり、生検診断の省略が可能であると報告してきた。以前の検討では380倍での観察で内視鏡医の精神率は高いものの、通常内視鏡観察をBlindにした病理医のspecificityは40%台と低く、380倍では核異型の判定が不十分であると考えられた(Kumagai Yet al. Current status and limitations of the newly developed endocytoscope GIF-Y0002 with reference to its diagnostic performance for common esophageal lesions. J Dig Dis. 13: 393-400, 2012)。そこで、内視鏡本体内蔵の1.6倍のデジタルズームを使うことで合計600倍まで拡大し食道癌、良性病変を観察した。すると、病理医のSensitivityは90%台、specificityも70%台に改善し、病理医の印象として600倍で核異型の判定は十分できるとの判断であった。 血管新生の検討は切除標本の集積と並行して埼玉医科大学総合医療センター病理部で保管されている病理標本より各深達度、組織診断での微細血管、腫瘍血管の発現状況を免疫染色を行い検討した(Kumagai Yet al. Angiogenesis in Superficial Esophageal Squamous Cell Carcinoma: Assessment of Microvessel Density Based on Immunostaining for CD34 and CD105. Jpn J Clin Oncol. 2014;44:526-33.)。この論文では炎症細胞浸潤が腫瘍血管を誘導することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的としてあげた食道の良悪性病変の正診率の算出は内視鏡医、病理医による600倍での検討結果を報告し本年publishされた。また核異型判定のために必要な至適倍率は今回の検討により600倍で十分という病理医の判定であり研究目的の2)も達成されている。血管新生の研究は拡大内視鏡観察で血管形態が観察された症例を蓄積中であるが年間表在癌が10例程度しか蓄積できずまだ時間がかかる。並行して埼玉医科大学総合医療センターに保管されている症例を免疫染色し検討している。2012年、2013年の症例は拡大内視鏡観察が施行された症例であり本来の目的をある程度達成している。現在2005年からの症例を検討しており正常、食道炎、low grade intraepithelial neoplasia,食道癌合計で約100症例を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
我々の検討から核異型判定のための至適倍率は約600倍と判明した。これをもとにオリンパス社は光学的にさらに倍率を上げ500倍のプロトタイプを開発した。今後GIF-Y0002の検討と並行して新規プロトタイプでの検討も進めていく。また生検診断省略を実現するために現在さらに観察を食道炎に絞り逆流性食道炎、カンジタ食道炎、好酸球性食道炎で興味深い知見を得るている。 血管新生の検討では、炎症細胞浸潤が食道癌の血管新生に重要な役割を果たしていることがわかった。現在腫瘍関連マクロファージ(TAM)の染色の他Cox2, iNOS, TPなどの免疫染色と微細血管の関係を検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末時点で必要な抗体は複数存在し、また必要な物品、消耗品はありましたが当該年度の90.5%をすでに使用しており、予算オーバーの可能性があるため次年度の補助金が交付されてから発注しようとしておりました。
|
次年度使用額の使用計画 |
すでに本年度の予算で抗体を現在発注しており、また必要物品(顕微鏡対物レンズなど)も発注しております。今後免疫染色に必要な試薬、消耗品を購入し、学会参加、英文構成費用に科研費を充てさせていただこうと考えております
|