研究課題/領域番号 |
26461053
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福田 浩二 東北大学, 大学病院, 講師 (20375083)
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研究分担者 |
中野 誠 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30513551)
近藤 正輝 東北大学, 大学病院, 助教 (10647671)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心房細動 / 徐脈頻脈症候群 / ペースメーカ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日常臨床で最も一般的な不整脈の一つである心房細動に合併する徐脈頻脈症候群(bradycardia-tachycardia syndrome; BTS)の機序解明および治療介入の可能性を検討することである。この目的を達成するため、大きく以下の3つの研究計画からなる。1.BTS合併心房細動患者の背景因子の調査、2.BTS合併心房細動患者における自律神経系の関与に関する研究、3.BTS合併心房細動患者におけるカテーテルアブレーションの効果に関する検討。平成26年度はBTS合併心房細動患者の背景因子の調査を第一に行った。研究実施機関における入院患者データベースをもとに、連続1285名心房細動患者を抽出。そのうち、ペースメーカ植え込み術を施行されている患者は213名であった。BTSによる植え込み患者は48人(中央値 73歳、男女 27/21人)であり、家族性拡張型心筋症の1人を除く全ての患者が50歳以上であった。基礎心疾患を有するものは9名で、心筋症が5名、虚血性心疾患2名、その他2名であった。心エコー上の左房径、左室拡張末期径、左室短縮率の平均値は各々、39±5mm, 47±5mm, 38±9%といずれも正常所見であった。これらの結果から、心房細動に合併するBTSは器質的心疾患よりも、加齢による要素が大きく、また心房細動の発生頻度は明らかな性差(男>女)が存在するが、BTSに関しては存在しないことが示唆された。一方、2014年度に当機関紹介となった心房細動患者のうち、BTSが疑われた少数の患者における電気生理学的検査の検討では、明らかな洞結節機能低下の所見を認めておらず、加齢に伴い顕在化する洞不全症候群とは異なる機序が存在する可能性が考えられる。BTSの背景因子が明らかになることは、積極的な治療介入の必要性を見極める上で重要な意義をもつ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究進捗状況としては、概ね順調と考えられる。当初目標としていた徐脈頻脈症候群(bradycardia-tachycardia syndrome; BTS)合併心房細動患者の背景因子に関する検討として、当院のデータベースからのデータ抽出・検討をおこない、その患者背景が明らかになってきている。さらに、平成27年度から本格的に行う予定であるBTS合併心房細動患者の自律神経系の関与の検討に関しても、カテーテルアブレーション治療時における基礎データ集積を始めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度のデータベースから、徐脈頻脈症候群(BTS)合併心房細動患者と非合併心房細動患者の背景因子の違いの検討をさらに進める。またBTSへの自律神経系の関与の検討を当初の予定通り進めていく。具体的には、H27年度はカテーテルアブレーション未治療の外来フォロー中、もしくは新規発作性心房細動患者において以下の項目の検討を行う。1. 心拍変動解析による心臓自律神経系の評価、2.立位負荷試験(Head up tilt試験)による心臓自律神経反射の評価、3.MIBG心筋シンチグラフィーを用いた心臓交感神経節分布の調査、4)睡眠時無呼吸症候群による自律神経系への影響。上記評価に加え、カテーテルアブレーションによるBTSへの治療効果の検討も開始する予定である。H28年度は、平成27年度から開始するカテーテルアブレーションによるBTSへの治療効果に関する検討を引き続き行う。これは、1.左房内高頻度刺激法における反応結果から、心外膜表面に分布する洞結節・房室結節への求心路となる自律神経叢の同定を行い、BTS合併および非合併患者における反応の違いの検討、2.自律神経叢へのカテーテルアブレーション治療前後の洞結節への影響の評価を行う。さらにカテーテルアブレーション術後のBTS合併患者の経過を追跡し、その短期・中期効果にわたるカテーテルアブレーション治療効果および、治療有用となる関連因子を検討し、今後の治療戦略につなげていく。また3年間にわたる研究結果をとりまとめ、成果の発表を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加学会が近隣開催であったため、旅費を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度も海外学会および国内学会への参加を予定しており、平成26年度分と併せて執行を行う。
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